黒柳 「アマとおっしゃると?」と返したんです。私はその頃、今よりも言葉遣いが綺麗でしたからね。芸能界に入って日も浅かったですし、お嬢さんだったんです。

山田 そうか、「アマ」なんていう汚い言葉は知らなかったんだ(笑)。

「この手の女は嫌だね!」と言われて
「そんな言い方があるんだな、というぐらい(笑)」

黒柳 はい、知らなかった。そうしたら渥美さん、「あーやだやだ、この手の女は嫌だね!」って言ったんですよ。大きい声でですよ!

山田 みんなに聞こえるように? その時、徹子さんはどんなふうに感じました? その言い方は他のスタッフにとっては、怒ってる感じがするわけでしょ。ジョークとしてならともかく、かなり失礼な言い方ですよ。

黒柳 アマというのがなんだかわからなかったので、感想はありませんでしたね。なるほど、「この手の女は嫌だ」なんて言い方があるんだな、というぐらい(笑)。よっぽど嫌らしい、って思いました。

 でもね、天の配剤といいますかね。『お父さんの季節』以外にもどういうわけだか、渥美さんと恋人や夫婦になる役が多かったんです。

山田 そういう印象がありますよ。

共演しているうちに少しずつ
「いい人かもしれない」と思いはじめた

黒柳 ええ。8チャンネルに出た時もそうでした。私はNHKのテレビ女優としてスタートしたので、民放には出ることは滅多になかったんですけれどね。フランスに留学しているお嬢さんと、コックさんの役。やっぱり恋人同士でね。

山田 そうして共演しているうちに少しずつ、「渥美さんはただならぬ人間だ」と思うようになっていく訳ですか?

黒柳 うーん。ただならぬ人間とは思わなかったですね、あんまり(笑)。だけど「いい人かもしれない」とは思いはじめました。ちょっとずつ。「かもしれない」って(笑)。

黒柳徹子が、「なんだこのアマ!」とブチギレた大物俳優に「返した言葉」とは?第47作『男はつらいよ 拝啓車寅次郎様』の撮影中、大船撮影所にてⒸ松竹

黒柳 いつからか渥美さんがね、テレビの現場にお友達を連れてくるようになったんで。「スリーポケッツ」というユニットを組んでいた谷幹一さんや関敬六さんたちを。すると谷さんなんかが私に、「あいつはね、座長だったんだよ。大したもんだったんだ」と教えてくれるの。

山田 浅草時代の活躍を聞かされた。