顧客のほうばかり見ていては
画期的なアイデアは生まれない

 顧客のニーズについて考えるときのもう1つのアプローチは、全く新しいニーズをつくり出すことだ。

 アップルの有名な「Think Different(発想を変えよう)」というテーマは、いまでも一部の著名なマーケティングリーダーが実践している。

 顧客が最も興味を持ち、最も興奮する革新的なことは、市場全体をすっかり刷新する「ビッグバン」のような変革だ。こうしたビッグバンのようなアイデアが顧客から出てくることもあるが、たいてい、顧客はそんなアイデアについて知ることもなく、期待してもいない。

「ビッグバン」は多くのマーケターにとって、事業カテゴリーを再定義し、将来どこから価値が生まれるかを改めて考察することを意味する。

 かつてジョブズ氏は「顧客に何が欲しいか尋ねていたらiPod(アイポッド)は生まれなかった」と語った。

 1世代前なら、同じことがソニーのウォークマンについても言える。ソニーの共同創業者で、当時は名誉会長であった井深大氏が飛行機に長時間乗っている間に音楽を聞けるように開発されたといわれる。

 米アイスクリーム会社Ben&Jerry's(ベン&ジェリーズ)は、創業者のベン・コーエン氏が、友人で共同創業者であるジェリー・グリーンフィールド氏の乏しい味覚をくすぐるべく、特別強いフレーバーと独特の食感をしたアイスクリームを作ろうと奮闘しなければ、存在していなかった。

 他にも、米物流大手FedEx(フェデックス)のフレッド・スミス氏、米Google(グーグル)のラリー・ペイジ氏、米Yahoo!(ヤフー)のジェリー・ヤン氏といった起業家はみな、従来の商品カテゴリーにはなかった新しい製品やサービスを開発し、大きな成功を収めた。

 時折、すでに確立された企業でも、新しいカテゴリーだと考えられる事業を創造する。

 例えば、64年に米IBMが開発した互換性が高い「System/360(システム360)」メインフレーム・コンピューターと周辺機器、それより規模ははるかに小さいが、P&Gが99年に発表した清掃用品「Swiffer(スイッファー)」シリーズなどだ。