――確かに、仕事というものには、実際にやってみないとその面白さや、それが自分に合っているかといったことがわからない面もありますね。

 確かにそういう面はあります。しかし、では、やってみて楽しくなかったとして、それが本当に楽しくないかどうかは実は判断できない。というのも、私たち自身が絶えず変化し続けているからです。

 将来、今より多様な視点を得られた自分なら、それが楽しいと思える可能性だってある。

 人は経験を積み、視点が増えると、以前は楽しいと思えなかったことが楽しく感じられるようになります。楽しくないからといってすぐに辞めてしまった会社が、実は将来的には自分に最適だったという可能性もある(笑)。

 20代では見えなかった仕事の意味や価値が、30代、40代になると見えて来たり、若いときには単調で退屈に思えた業務が、経験を積むことで深い意味を持って感じられたりするようになる。

 このような成長プロセス自体を楽しめるようになることが、長期的なキャリア形成においては重要だと思いますね。だからこそ、目先の楽しさだけで判断するのではなく、将来の自分が今とは違う価値観を持つ可能性を常に念頭に置いてほしいのです。

生成AIによってなくなる仕事
なくならない仕事とは何か

――自分が変わることもあるし、仕事の内容も、生成AIの浸透などで近年はめまぐるしく変わっていますね。

 生成AIの登場で、就活のやり方はもちろんのこと、入社後の仕事のあり方も根本的に変化しています。2013年に、オックスフォード大学のマイケル・オズボーン教授らが、その時点で存在していた職業の47%が人工知能やロボットで代替可能と試算した論文を発表し、物議をかもしたことがありました。

※Frey, C. B., & Osborne, M. A. (2013). The future of employment: How susceptible are jobs to computerisation? Oxford Martin School, University of Oxford. Retrieved from
https://www.oxfordmartin.ox.ac.uk/downloads/academic/The_Future_of_Employment.pdf
アメリカの702職種について、自動化(AI・ロボット・アルゴリズム)による代替可能性を定量的に推計した。代替リスクが高い例として、電話オペレーター、銀行の窓口係、レジ係、事務補助、タクシードライバー、製造ライン作業など、代替リスクが低い例として、医師、教師、作家、経営者、心理学者、ソーシャルワーカー、クリエイティブ職(芸術家やデザイナー)などが挙げられている。