日本の海産物に対する輸入停止措置も然り。中国は2023年8月に始まった福島第一原発処理水の海洋放出に反発して長らく、日本の海鮮物の輸入中止措置を取っていた。昨年9月にやっと中国側が態度を軟化させ、日本メディアが「解禁」と大喜びで報道したものの、実際の輸入再開は遅れに遅れ、11月初めにやっとホタテの輸入が始まったばかりだった。
もちろん、業界関係者にとっては「これからやっと!」という知らせが再び暗転したのは痛い誤算だったろうが、実際に日本全体にもたらした衝撃はどこまで大きかったのか。
「54万件キャンセル」の実態
中国国内では、政府の勧告によって、旅行ツアーが中止された、中国の航空会社が日本便を減らした、航空会社が無償でキャンセルに応じた、その数約54万件に上った……などという報道が、矢継ぎ早に行われた。そして、それを日本メディアが”翻訳”する形で日本国内に伝えたことで、その数にびっくりした人たちが慌てふためいている。
先にも述べた通り、それぞれのキャンセルは日本の個別の業者に直接の影響をもたらすことは否定しない。だが、実施直前のキャンセルに対して、日本側は毅然として規定通りのキャンセル料をいただく権利がある。中国側から無償キャンセルを求められたケースもあるようだが、それに応じる必要はないはずだ。相手都合のキャンセルなのだから。まず、それがビジネスのルールだということを再確認しておきたい。
中国側が求める無償キャンセルは、中国国内で起きていることの延長である。つまり、中国政府の勧告に従うのは「中国人としての務め」であるという意識からくるものであり、多くの企業や関係者が身銭を切らされている。だが、もちろん、日本人にはその「務め」は通用しない。
その結果、実際にあおりを受けているのは、中国の旅行業者や航空会社、そして楽しみにしていた旅行を中止せざるを得なくなった中国人旅行客である。その図式を、まず日本側も理解する必要がある。







