業務習熟の仕方やスピード感の点で自身の考え方と合わないと感じる日々。
「このままでいいのか?」
そんな疑問が確信に変わるのに、時間はかかりませんでした。Aさんは、入社からわずか半年で退職を決意します。
「市場価値ゼロ」の恐怖を乗り越えた、対面面接での手応え
退職してからの転職活動は、想像以上に孤独で不安なものでした。 「新卒ですぐに辞めた人間なんて、どこも雇ってくれないのではないか」 「自分には市場価値がないのでは」と不安にさいなまれる日々。
さらに、保険の切り替えや税金の手続きなど、不慣れな事務処理が追い打ちをかけ、焦りはピークに達していました。
そんな暗闇の中にいたAさんに、一筋の光が差したのは「対面面接」の場でした。 コロナ禍以降、主流となっていたオンライン面接に苦手意識を持っていたAさんですが、ある企業の一次面接で、久しぶりに対面で話す機会を得ます。
画面越しではない、目の前の面接官の温度感。うなずきや表情の変化。 「あ、私の言葉がちゃんと伝わっている」 。その手応えを感じた瞬間、Aさんの中で何かが変わりました。これまで「スキルがない」と思い込んでいたけれど、相手の表情を読み取り、適切な言葉でコミュニケーションを取る力は、確かに自分の中にあったのです。
「やればできるんだ」。 小さな成功体験が、Aさんの背中を強く押しました。
失敗体験を「自分のペース」に変える力
最終的にAさんは、自分をじっくり育ててくれる環境のある物流会社の営業職への転職を成功させました。 「次の会社では、基礎をしっかり積み上げたい」と語るAさんの顔に、もうかつての焦りはありません。
Aさんが成功した最大の要因は、「短期離職」というネガティブな事実を、「自分に合わない環境を早期に見極められた」というポジティブな再出発の材料に変えられたことにあります。 もしあのまま、合わない環境で何年も過ごしていたら、自信を完全に喪失していたかもしれません。自分が求めているものを真剣に考えられたからこそ、「自分はしっかり教育体制がある環境で、一歩ずつ進みたいのだ」という、明確なキャリアの軸に気づくことができたのです。







