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「入社してまだ半年。ここで辞めたら『逃げた』ことになるんじゃないか」 「今の仕事に違和感があるけれど、すぐに辞めてしまったら市場価値がなくなるんじゃないか」 そんな不安を抱えながら、毎朝重い足取りで通勤電車に揺られている20代、30代の方は少なくありません。しかし、変化の激しい現代において、キャリアの正解は一つではありません。時には「違和感」こそが、自分らしい働き方を見つけるための羅針盤になることもあるのです。今回は、新卒入社から1年未満というタイミングで「転職」という決断を下し、見事に自分らしいキャリアを切り開いた二人の事例をご紹介します。一人は、妥協で選んだ環境から抜け出し、ゼロから自信を取り戻したAさん。 もう一人は、理想と現実のギャップに苦しみながらも、「働き方」の軸を見直したBさん。対照的でありながら、どこか共通する悩みを持っていた二人の物語と、そこから導き出される「後悔しない仕事選びの法則」とは何か。リクルートエージェントのキャリアアドバイザーがその軌跡を追います。(文=佐藤 光紘/リクルートエージェント キャリアアドバイザー)

「半年未満」の退職からつかんだ自信。妥協からの脱却と再出発を遂げたAさん

 Aさんのキャリアのスタートは、決して順風満帆なものではありませんでした。 新卒で入社したのは外資系ホテル。外国語専門学校に通っていたこともあり、学んだ英語を活かせる可能性に期待しての選択でしたが、その内実は「焦り」から生まれたものだったといいます。

 学生時代、周囲が次々と内定を獲得していく中、親や学校からの「早く就職先を決めなさい」というプレッシャーは、Aさんの心をじわじわと追い詰めていました。「とにかく早く内定が欲しい」「安心させたい」。そんな思いから、過去にアルバイト経験があり、なんとなくイメージがつく接客業を志望した結果、面接の雰囲気が良かったという理由から、最初の会社を選んでしまったのです。

 しかし、入社後に待っていた現実は過酷でした。人手不足が常態化していたAさんの職場では、新人を育てる余裕などどこにもありません。何事も見て覚えねばならない環境の中にいながら、ホテル業界特有の高度なマナーや専門知識を求められることに違和感を抱き続けます。