メルカリは国内では後発(同業のフリルが2012年リリース)でしたが、テレビCMなど大規模なプロモーションと手数料無料戦略で急速に規模を拡大しました。
また、スマホでのフリマ取引に最適化したUI(ユーザーインターフェース)であることも、ヤフオクなどPC・フィーチャーフォン時代からの伝統的なプレイヤーと競うための武器でした。
加えてメルカリは、ヤフオクなど既存サービスの仕組みを土台としつつ、既存サービスが取り込めていなかった若年女性層の消費者心理に最適化されたさまざまな機能を導入します。
象徴的なものが、「アプリ内残高(売上金管理機能)」と「匿名配送」です。
アプリ内残高(売上金)は、本人確認なしで取引できる画期的な仕組みでした。これは、かつてイーベイが必須としていたクレジットカード登録とは真逆の設計思想です。
ユーザーはスマホさえあれば取引を開始でき、得た売上金をポイントに変えてアプリ内での購買に使える「循環型経済圏」が生まれました。現在でもメルカリは、本人確認がなくとも、出品・購入が可能です(高額取引などの一部機能除く)。
匿名配送は、物流会社と提携し、住所・氏名を相手に知らせずに取引・発送できる仕組みです。以前から存在していた仕組みですが、メルカリがターゲットとした若年女性層のプライバシーに対する不安を大きく和らげたのは間違いありません。
実際、ヤフオクなど類似サービスは次々と匿名配送を導入していますし、メルカリは昨年まで決算説明会資料などでメルカリを紹介する際、配送オプションの代表例として匿名配送を掲げていました。
実は、匿名配送のニーズは、イーベイ参入時からありました。
1999年の参入直後、イーベイの幹部はあるメディアのインタビューで「日本の女の子に、イーベイは怖いですかって聞いたらね、面白いことに『私の住所を教えたくない』って。しかし、住所を教えなかったらどうやって商品を引き取るんでしょう?」と語っています。匿名性へのニーズを把握しながらも、ビジネスモデルとの兼ね合いで改善に踏み切ることはありませんでした。
言語や商流など「文化」への気づきはありつつも、対応が伴わなかったことが、イーベイがヤフオク、ひいてはメルカリが開拓した日本のオークション市場を取り込めなかった理由といえるでしょう。
そしてこれは、日本企業の海外展開においても重要なポイントとなります。







