米国市場で苦戦するメルカリ
海外展開に見えた光明とは?
ご存じの通り、メルカリは米国市場に進出しています。では、メルカリは日本の成功モデルを米国で再現できたのでしょうか。
メルカリは2014年、米国内のユーザーが出品・購入する個人間取引アプリとして、米国版メルカリをリリースしました。日本版「メルカリ」アプリのビジネスモデルをそのまま移植する挑戦です。
ただ、事前に制度や文化を綿密に調査してリリースし、一定のユーザーを獲得したものの、日本ほどの成功には至っていません。直近の決算でコスト削減によりようやく黒字化したものの、売り上げは伸び悩んでいます。
参入する側となった日本企業ですが、やはり米国文化への対応が不十分だったといえるでしょう。
例えば、国土が広く送料がかかる米国では、購入者が送料を負担する商習慣が存在します。出品者が送料を負担することが多い日本のメルカリとは逆であり、購入価格は実質的に高まります。また、米国では売り手と買い手が直接会って中古品を取引するガレージセール文化が根付いていますし、地域情報サイトの「クレイグリスト(Craigslist)」のように先行した競合も存在しています。
一方で、海外には別の成長機会が見えています。
日本版メルカリで出品された日本発コンテンツ(玩具・フィギュア・ホビーグッズ)などが、海外ユーザーの間で強い人気を持ち、越境取引が急成長していることです。
25年6月期の越境取引の流通取引総額(GMV)は900億円と3年で15倍に拡大し、国内のGMVの8%を占めています。これは、米国版メルカリのGMV(約1091億円)に匹敵する規模です。
メルカリは越境EC領域の強化を成長戦略の軸に据え始めました。
越境取引の成長は、少額貨物の輸入関税を免除する「デミニミスルール」が背景にあるといわれています。米国は今年8月からデミニミスルールの適用を停止しているため、今後の越境取引のトレンドが変わることは注意しなければいけないでしょう。
とはいえ、メルカリのケースは日本のネット企業の海外展開について、ヒントを与えてくれています。
海外の消費者は日本人出品者が提供する「質の高い日本コンテンツの中古市場」を評価したということ、つまり、フリマアプリのプロダクトそのものではなく、日本事業が育んだ出品者と商品群を評価したということです。
各国の文化に合わせてプロダクトを作り直すのは時間とコストがかかる一方、日本事業を通じて蓄積されたサプライサイドのネットワーク・コンテンツ(出品者・商品)という文化的な資源が、自国発のプラットフォームを越境的に拡張するカギとなるのかもしれません。







