連綿と受け継がれてきた
「滝の原主義」という教育理念
宇都宮高校（略称は「宇高（うたか）」）のルーツとなる旧制栃木中学校は、1879年の創立だ。短期間だが県第一中学を名乗ったこともあった。
埼玉県や群馬県と同様、栃木県の旧制中学校、旧制高等女学校は戦後の学制改革でも男女別学を貫いた（ただし定時制、通信制などは共学）。現在でもその多くが別学を続けている。宇都宮高校も男子校だ。
「対」のような形で、宇都宮市内には宇都宮女子高校がある。前身の栃木県高等女学校の創立は1875年で、宇都宮高校より古い。県庁所在地に第一号として設立された高等女学校で、旧制中学校に先んじて創立された事例は、全国で栃木県しかない。
公立高校の男女別学がいまだに続いている埼玉県では最近、「別学は廃止して男女共学にすべきだ」という声が強くなっている。だが、宇都宮の場合は、そうした声はほとんど聞かれない。宇都宮女子高校OGたちの誇りが、めっぽう強いからだともいう。
宇都宮高校の校地にある白亜の館は県内最古の学校建築で、「宇都宮高校旧本館」の名称で1998年に国の登録有形文化財に登録されている。1893年に竣工し、戦後の二十数年間も校舎として使用されていた建物だ。現在は「滝の原会館」と称されており、同校の歴史を中心とした教育資料を展示し、一般公開されている。
「滝の原」の由来は、校地の地名にある。そこからとった「滝の原主義」という教育理念が連綿と受け継がれてきた。その一節には「剛健なる真男子を作らんとするにあり」と記されている。こてこての男子校であることが、うかがわれる。
教育理念を発展させた生徒指標として、「和敬信愛 質実剛健 自律自治 進取究明」が定められている。
10万平方メートルを超える広大な敷地を有している。二つの運動場の間にJR日光線の線路が走っているほどだ。
エピソードがある。1882年の県第一中学時代に、教師引率のもとで生徒が東京・上野で開かれた第2回勧業博覧会を見学した。この旅行は日本での学生・生徒の集団旅行の草分けといわれている。現在まで続く「修学旅行」の起源の一つだ。
2003年度には文部科学省から、スーパーサイエンスハイスクールの指定を受けた（07年度まで）。
25年度の大学入試（25年4月入学）では現役、浪人合わせ、東京大20人（うち現役は10人）、京都大2人（2人）、東京科学大5人（3人）、一橋大2人（0人）、北海道大10人（5人）、東北大40人（29人）、新潟大11人（10人）宇都宮大6人（5人）など。
東北新幹線に乗れば宇都宮―仙台間は1時間少々で到着する。このため例年、東北大には多数が進学している。
25年度入試における現役での国公立大への合格者数は計131人、25年3月の卒業生数は280人だった。その比率は47％ということになる。
私立大には延べ人数で、早稲田大50人（うち現役は30人）、慶応大34人（うち現役は15人）、明治大73人（うち現役は46人）など。
同校では「授業を十分に身に付ければ現役合格が可能である、と言えるだけの授業を実践している」と、胸を張っている。
