保険大激変 損保の構造的課題が生保にも飛び火!#10Photo by Yoshihisa Wada

損害保険業界では保険料の価格調整行為(カルテル)や、自動車保険を扱う規模の大きな代理店に対して過度な便宜供与を行うなど、構造的課題が噴出したことを受けて、金融当局主導で新たな業界ルールの策定が進んでいる。そんな中で三井住友海上火災保険は代理店への支援のあり方を見直し、2025年4月に新たな組織を立ち上げる。特集『保険大激変』の#10では、三井住友海上火災保険の舩曵真一郎社長に、その狙いを聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部編集委員 藤田章夫、構成/ダイヤモンド編集部副編集長 片田江康男)

保険会社は仕事のやり方を変える
“出直し元年”にするべき

――損害保険業界の構造的課題を議論すべく金融審議会の損害保険業等に関する制度等ワーキング・グループと、損害保険業の構造的課題と競争のあり方に関する有識者会議が開かれました。この先1年程度かけて、損害保険業界の新たなルールが決まります。今の状況をどのように捉えていますか。

 今の状況を、健全な保険業務の運営の下で、社会のリスクマネジメントを高度化させる機会としなければいけないと考えています。

 ビッグモーター(現WECARS〈ウィーカーズ〉)への入庫誘導や損保会社の代理店への過度な便宜供与、保険料の事前調整、顧客情報の漏えいなどの問題は、結局、競合他社も同じようにやっているから問題ないという考え方になっていたからだと思います。

 本来は、各保険会社がリスクアペタイト(金融機関として、事業計画の実行のために引き受けるリスクの種類と量)に沿って、保険のアンダーライティング方針を作り、どのようなリスクを引き受けるか分析した上で、保険契約を引き受けることを考えなければなりません。保険会社のリスクマネジメント力を高度化させて、社会の発展に貢献するのが、保険会社の本業です。

 今必要なのは、顧客本位のあるべき姿をしっかり描いて、それを極めていくという姿勢を持つことです。業界の制度やルールは、お客さまの利益のためになることを目的としていたはずですが、時間とともに当初の意義を忘れて、業界や保険会社、代理店のためのルールに変質してしまいました。

 これから作られる制度やルールは、顧客本位を確保し、健全な競争を促すものになります。保険会社は、それを実現するために、仕事のやり方を変えなければなりません。保険会社は今年を、“出直し元年”にする必要があります。

――一連の不祥事をきっかけに、保険会社から大規模代理店への出向者を引き揚げる動きが加速しています。保険会社の仕事のやり方が変わる象徴的なことだと思いますが、代理店やその先にいる顧客へのサービスレベルを維持するために、どのような対策を考えていますか。

 代理店への出向者がいなくても、お客さまの利益が損なわれないような体制の強化・整備が必要だと思っています。

三井住友海上火災保険は2025年4月に、それまで準備してきた新たな代理店支援体制を具現化するために、新たな組織を立ち上げる。その名称や規模、狙いとは?次ページで詳しく聞いた。