永沢まことは、アニメーター出身のイラストレーターだった。世界各国を旅しており、さまざまな国のイラストを幅広いテーマで描いた。22年に死去した。
写真家では、松江泰治が02年に木村伊兵衛写真賞を受賞している。「被写体に影が生じない順光」といったルールを自ら課している。東大理学部地理学科卒だ。
朝日新聞社出身の写真家・栗原達男もいる。開成中・高校―早稲田大を通じて写真部だった。
競馬界で活躍しているOBもいる。日本中央競馬会の栗東トレーニングセンターに所属している調教師の矢作芳人(やはぎ・よしと)だ。父親も調教師だった。「息子には違う道を歩ませたい」という父の反対を押し切って、本人が調教師の道を選択した。
25年11月、「米国競馬の祭典」と名高いブリーダーズカップのメインレースで、日本調教馬が初めて優勝を果たした。その優勝馬「フォーエバーヤング」を育て上げたのが矢作だった。日本競馬史に残る快挙だった。
150年余の校歴に貫かれる
「開物成務」の精神
開成は中高一貫の6年制男子校だ。中学で300人が入学、高校で100人が加わる。中学校から入学した内部進学生と高校から入学した外部進学生を、第2学年から混合したクラス編成にしている。
教育の基本理念は「自由」だ。「ペンは剣よりも強し」「質実剛健」「自主自律」に加え、校名「開成」の起源である「開物成務」――人知を開発し、事業を成就させる――といった精神が、150年余の校歴に貫かれている。こうした校風を慕って、親子兄弟が開成出身というOBも多い。
開成には博士号保有者や、専門分野の本を出している教員がたくさんいる。個性豊かな教員により、教科書だけでなく独自の副教材を使った高レベルの授業が行われている。
開成OBで校長の野水勉(東大工学部卒、元名古屋大教授)は、「優秀な生徒たちに突き上げられて、教員も成長した」という。
課外活動、部活、同好会活動を奨励し、新しい同好会設立も積極的に応援する。文武両道で、楽しくのびのびとした学園生活を送れるように…というのが、教員、生徒の共通認識だ。
名物行事は、毎年5月に行われる中学・高校合同の運動会だ。中高縦割り8色のクラスカラーに分かれて、対抗戦を行う。毎年、1万5000人が訪れる。生徒たちがすべて、自主企画・運営をする。
筑波大附属高校とのボート対抗戦(埼玉県・戸田ボートコース)は、伝統の一戦として知られている。1920年に始まり、学校間のボート対抗戦としては、日本で最も古いといえるだろう。
9月に行われる文化祭も生徒の手作りだ。著名人の講演会がたびたび開かれるが、講師の選定や依頼は生徒自らが行う。運動会・文化祭とも、生徒の自主性を重んじる自由な校風を表している。
「学校は楽しいですか」というアンケート調査を毎年2回、実施している。「楽しい」「まあまあ楽しい」という回答が、各学年で95%以上に達している。
こうした校風から、勉学に偏らない個性的な文化人が多数生まれ、社会で活躍してきたのだろう。(敬称略)
(フリージャーナリスト 猪熊建夫)







