マネジャーが抱えがちな
「仕事の借金」は2種類ある

 仕事は、ひとたび後手に回ってしまうと、そこから抜け出すのが非常に難しいものです。放置しているうちに、どんどん傷口が広がります。

 また、同じ作業でも、こちらが先読みして対応する場合と、誰かに指摘されてから対応する場合では、相手の受ける印象は大きく異なります。

 後手に回っていると、どうしても相手からの指摘が増えますので、「仕事が遅い」「気が利かない」という評価につながってしまいます。マネジャーであるあなたがコントロールしなければ、チーム全体がそういう低い評価を受けることになります。

 そのため、どこかのタイミングで一気に遅れを取り戻すことが重要です。

 さらに一歩踏み込んで、先手を取ることができれば、仕事に対して余裕を持って取り組むことができます。

 先手を取っていれば、仕事の主導権を握ることもできるでしょう。その状況を目指して、まずは借金の返済です。

 マネジャーが抱えがちな業務的な負債は、大きく2つに分けられます。

(1)時間・工数的な負債

 一つめは、物理的な遅れです。

 日々、仕事に追われて、やるべき作業がギリギリになっている。

 毎日、あるいは、毎週訪れる締め切りに、常に追われている。

 そういう状況から脱するために、「後回しになってしまっている作業」「少し先に締め切りが設定されている作業」を、うまく片付けていきましょう。

 まずは、締め切り順に作業を並べましょう。

 この場合は、重要性はあまり気にせず、納期で整理する方が良いです。

 仕事は、それが重要かどうかにかかわらず、緊急性が高いものが優先されてしまうものです。

 つまり、納期が近づいてくると、さして重要ではない仕事も緊急性が高いものとして取り扱うこととなります。

 そうすると「納期が近く、重要性の低い仕事」に手を取られてしまい、「重要性の高い仕事」に手を付ける余裕がなくなっていきます。

 これを回避するために、「納期が近い順にさっさと片付ける」という作業を行うべきなのです。

 長期休暇のタイミングでこうした仕事を一気に片付けてしまうと、年始のスタートがスムーズになります。

(2)意思決定面での負債

 二つめは、「決めていないこと」への対応です。

 仕事に追われていると、ものごとを「決める」ことに対して、考える力を割きにくくなります。

「斧を研がない木こり」の逸話をご存じでしょうか。

 毎日毎日忙しくしている木こりは、どんどん木を切っているうちに、斧がどんどん切れなくなっていきます。

 一度、木を切る手を止めて斧を研げばよいのですが、「忙しくてそんな暇はない」と言い、切れない斧で木を切り続ける……というお話です。

 何かを変えることを後回しにしていると、全体の効率がずるずると下がっていくという状況はよくあります。

 しかし、目の前の作業に追われ、一時的な負荷向上に拒否感を持ってしまっていては、そこから抜け出すことはできません。

 今までのやり方を、変える。

 従来やっていることを、やめる。

 新しい取り組みを、始める。

 こうしたことを「決める」には、長期休暇は非常に良いタイミングです。