コンサル大解剖
Photo:Javier Zayas Photography/gettyimages

「最近、ワンプール制のコンサルが増えてきていますよね。実際どうでしょうか」。ここ数年、求職者からそうした相談が明らかに増えている。背景にあるのは、コンサルティング業界におけるアサインの考え方の違いだ。コンサル業界には設計思想の異なる二つの構造が併存している。一つは、金融・製造・通信といった業界別、あるいは戦略・業務・人事・ITといったテーマ別に人材を束ねるマトリクス制であり、もう一つは、人材を特定領域に固定せず、一つのプールとして捉え、案件ごとに適材適所で配置するワンプール制である。長期連載『コンサル大解剖』内の連載「コンサルキャリアの新潮流」の本稿では、転職支援の現場で見えてきた実例を基に、マトリクス制とワンプール制という二つのアサイン構造が、経験の積み方やネクストキャリアにどのような違いをもたらすのかを解説していく。(ラフロジック取締役 尾崎良太)

コンサルの役割が大きく変遷
ワンプール制ファームが台頭

 弊社は、年間1000人を超える求職者のコンサルティング転職に向き合っているが、ここ数年、アサイン構造を軸にキャリアを考える人が確実に増えている。一方で、相談の場では次のような問いが繰り返し投げ掛けられる。

「マトリクス制とワンプール制、どちらがキャリアにとって有利なのか」「専門性の身に付き方や、ネクストキャリアでの評価はどう違うのか」「今後、コンサル業界ではどちらのアサイン構造が主流になっていくのか」

 こうした問いの背景には、「今どちらの環境を選ぶかによって、将来のキャリアにおける選択肢の幅が変わってしまうのではないか」という不安がある。

 それぞれの選択によってどのような経験が積み上がり、その経験を将来どのように説明できるのかという点は、コンサルタントの市場価値に直結する、極めて重要な論点なのである。

【コンサルに求められる役割の変遷とワンプールファームの台頭】

 コンサル業界の役割は、この十数年で少しずつ姿を変えてきた。かつて中心だったのは、経営戦略を中心とした意思決定支援だ。コンサル黎明期の“戦略ファームの時代”である。

 やがてITが経営の中核を担い、事業がグローバルに広がるにつれて、企業の課題は一部門では収まらなくなっていく。こうした流れの中で、業界別・機能別に専門家をそろえ、一定の品質で幅広いテーマに対応するマトリクス制の総合ファームが拡大した。

 そして近年、DX(デジタルトランスフォーメーション)を中心とした変革案件が主流になる中で、コンサルに求められる役割はより現場の実務支援に近づいてきている。従来のように戦略・構想を描いて終わるのではなく、ロードマップ策定、業務・システム要件の具体化、案件進行支援、現場定着まで含めて、変革を動かし切ることが成果として問われるようになった。

 この局面で重宝されるのは、「特定の業界やテーマの専門家であること」を前提にしつつも、それに閉じない人材だ。現場に入り込み、顧客の言葉にならない違和感を拾い、関係者の利害を調整し、意思決定を取り付けながらプロジェクトを前に進める。

 そうした動き方ができるジェネラリスト人材と、それを前提にした組織運営が、実務上はまりやすかった。人材を特定の業界やテーマに固定せず、案件単位で配置するワンプール制のファームが目立つようになったのは、こうした実務上の要請にかなっていたからだ。

 こうした環境変化を背景に、ワンプール制のアサイン構造を採るコンサルファームは、ここ数年で存在感を大きく高めている。その代表格がベイカレントである。同社は約6000人規模にまで拡大し、日系最大級のコンサルファームへと成長した。さらに近年ではベイカレントの成長と並行して、そのモデルを踏襲し、派生する形で生まれたワンプール制ファームも年々増加している。

 待遇面でも、ワンプール制ファームは転職先の選択肢として十分に比較対象に入る存在となっている。年収水準は、ビッグ4やアクセンチュア、アビームコンサルティングといった先発のマトリクス制ファームと比べても遜色ない、あるいは、それ以上となるケースも見られる。こうした背景から、採用市場での知名度や人気も高まり、新卒・中途共にコンサル人気ランキングで上位に入る企業も増えてきている。

 このように、変革案件の増加に伴うビジネスニーズと、働く体制、仕組みとしての魅力の双方が重なり合う形で、特にここ数年でワンプール制ファームは転職市場における存在感を高めている。

 次ページでは、転職支援の現場で見えてきた実例を基に、マトリクス制とワンプール制という二つのアサイン構造が、経験の積み方やネクストキャリアにどのような違いをもたらすのかを解説していく。