30万部のベストセラー『伝え方が9割』の著者・佐々木圭一氏が、同じく30万部のベストセラー『「ついていきたい」と思われるリーダーになる51の考え方』の著者である、あのビジネスリーダーと対面。続編となる部下編『「君にまかせたい」と言われる部下になる51の考え方』を出したばかりの元スターバックスコーヒージャパンCEO・岩田松雄氏との対談をお届けします。(取材・構成/上阪徹)

鍛えてもらうから、見えてくるものがある

佐々木 岩田さんの『「ついていきたい」と思われるリーダーになる51の考え方』『「君にまかせたい」と言われる部下になる51の考え方』で、強く印象に残ったのは、人間そのものを鍛えなさい、という話でした。もちろんスキルも大事だけれど、人間本来の力、人間力こそが、一番大事だ、と。そういう力って、学んで高められたりするんでしょうか。

岩田 人間力の定義が難しいですけどね。ただ、こんなふうにやったら人間力が高まるから、あなたもスキルとして身につけなさい、といっても、なかなかできるものではないと思います。
 やっぱりその人が悩んでいるときにこそ、見えてきたりするものなんですね。壁にぶつかっている人って、目の前は壁がそびえているんだけど、意外に右端に抜け道があったり、壁の一部が低くなっていたりしているじゃないですか。そういうのを誰かにポンと教えてもらうと、ハッとして成長できたりする。
 でも、壁にぶつからないと、なかなかその意識って出てこないような気がするんです。問題意識があるから、初めて出てくる。気づきが生まれる。こういうもんだと教えられても、すぐに忘れてしまったりするものですが、実際に壁にぶつかるとストンと自分のものにできたりする。
 そういうものの積み重ねが、人間力のような気がしますね。だから、いろんな経験をしなさい、チャレンジをしなさい、挫折をしなさい、みたいなことになるんじゃないかと思うんです。

佐々木 こういうことは、学校では教えてくれないわけですね。

岩田 そうですね。僕自身も、会社に入って二年目に、本当に尊敬できる上司と出会うことができて、そこでいろいろ厳しく叱ってもらったり、教えてもらったことが、大きかったんです。
 鬼軍曹とまでは言わないけど、今はそういう、厳しくて、心からこの人の言うことを全部聞きたい、みたいな上司とか先輩とか、会社にあまりいないですよね。そういう人を社内で作ろうという風潮もなくなっている気がする。パワハラの問題もあったりして。
 でもね、やっぱり1000本ノックじゃないけど、ある程度、鍛えてもらわないといけないと思うんですよ。最初の頃、厳しくダメ出しされて、レポートに赤字をいっぱい入れられて、そういうところから、見えてくるものもたくさんあるんです。