伝え続けていかないと、現場は間違えてしまう
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岩田 今、厳しい上司、少ないですよね。そういう上司は嫌われたりする。ちょっと厳しく部下に言うと、へこんでしまったり。部下も打たれ強くないですからね。
あるいは、部下に嫌われたら嫌だからと、部下にゴマをすってしまう上司もいたりする。こうした風潮が、ある意味、人間関係を希薄にしてしまっていると思います。
佐々木 『「君にまかせたい」と言われる部下になる51の考え方』の中で、感謝することが大事だ、と書かれていますよね。僕も、『伝え方が9割』の中で、例えば「ノー」を「イエス」に変える7つの切り口のひとつとして、感謝のことを書いているんです。
相手に感謝するという姿勢を常に持つことで、人間関係はまったく違ってきますよね。基本中の基本で、誰にでもできることだけれど、意外にやっている人は少ないのかもしれないですね。
岩田 そうですね。
佐々木 『「ついていきたい」と思われるリーダーになる51の考え方』では、リーダーの口癖が印象に残りました。「何か困ったことない?」というものです。
ただ自分がそう思って言っているのではなくて、部下の人たちが一番上司に言いたいことを、部下のことを想像した上で上司が言う、というのは、すごくいいと思ったんです。
岩田 それは実際、私の口癖なんです。
佐々木 あと、ボディショップの社長時代、店舗で簡易包装を推奨していくエピソードがありましたよね。会社としては、全社のビジョンに基づくブランド戦略も含め、地球環境保護のために簡易包装を導入していたのに、それがいつの間にか、経費削減策のようになっていた。
会社の戦略も、部下に伝えるのは難しいんだな、と改めて感じました。
岩田 やっぱり、一番本質的なことを常に考えて、それを伝え続けていかないと、みんな間違っちゃうんです。環境保護のために、お客様に理解してもらって簡易包装を始めたのに、それが経費削減のために、と話がすり替わってしまう。
それは、僕の考えが下に降りていくときに、誰かがそういう話し方をしてしまったのではないかと思うんですよ。でも、環境保護のため、というのは一番大事なコアなバリューなんです。それを間違えて伝えてしまったら、本当にすべて失ってしまう。
すぐその場で担当の責任者を呼んで、一体どうなっているのか、という話をして、もう一度、全店に確認するように指示をしました。売り上げや利益も大事ですが、それ以上に大事にしているものを踏みにじられたような感覚でしたよね。
佐々木 店舗で、簡易包装を勧めるときの言い方のようなものは、何かあるんですか。
岩田 もともとボディショップは、お客様の多くが簡易包装の理由をわかっておられます。そういう理念を持ったブランドですから。だから、「簡易包装にご協力いただけますか」と一言、聞いていたと思います。
でも一方で、雨の日にたくさん荷物を持っていたら、やっぱり袋にはお入れしない簡易包装は勧めるべきではないと思うんです。袋があったほうが、お客様にはありがたいでしょう。
つまり、その場その場で、簡易包装すべきときもあれば、してはダメなときもあるんですね。それを、スタッフがきちんと考えているか、ということが大事なことなんです。
やっぱり仕事って、深いんですよね。それこそ、人間力が問われるんです。