それは、自分が社長を務める上場企業のお金を使って、個人の借金を返すという、完全なる公私混同の禁じ手です。

 吉田社長は、PXC社の子会社である「ピクセルエステート」を利用しました。この子会社で、「太陽光発電所を作ります」「リゾート開発をします」といった架空のビッグプロジェクトをでっち上げたのです。そして、協力会社に対して「手付金」という名目で会社のお金を送金させました。

 会計用語では「前渡金(まえわたしきん)」と呼ばれます。わかりやすく言えば、「まだ商品は届いていないけれど、先に代金の一部を払っておくね」という、手付金や頭金のようなものです。

 本来であれば、発電所や土地といった資産が手に入るはずですが、プロジェクト自体が架空なのですから、永遠にモノは届きません。会社のお金は、協力会社を経由して、そのまま吉田社長の借金返済へと消えていったのです。

ピクセルカンパニーズ筆者作成
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疑惑の目を向ける監査法人と
泥沼の隠蔽工作

 当然ながら、上場企業の会計をチェックする「監査法人」はプロフェッショナルです。この不自然な資金の流れを見逃すはずがありません。当時監査を担当していた「監査法人アリア」は、鋭い指摘を行いました。

「この手付金、本当に実体のある取引ですか?吉田社長個人の借金返済に使われているんじゃありませんか?」

 図星を突かれた吉田社長ですが、ここで引き下がるどころか、さらに深みにハマっていきます。なんと、協力会社と口裏を合わせて「うその契約書」を作成し、監査法人を欺こうとしたのです。

 さらに悪質なのが、「日付の改ざん」です。 もし、「会社から手付金が出た日」の直後に「社長の借金が返済された日」が来ていたら、誰が見ても「あ、このお金を使ったな」とバレてしまいますよね。