シェ それはよい質問ですね。確かに世界にはスピリチュアリティや宗教に由来する慣習・行事を取り入れている企業がありますが、日本企業ほどそれらが自然に溶け込んでいるわけではありません。日本企業における神道や仏教に関わる慣習・行事は、もはや文化といってもよいのではないでしょうか。
では、こうした慣習・行事は企業の実利につながっているのか。
世界のトップ経営者たちによれば「社外研修、コミュニティへの寄付といった活動と同じように直接的にどんなリターンがあるかは測定できない」そうです。けれども、長期的には企業の成長のために役立つと感じているからこそ、それなりの費用を投じて続けているのだと言います。
佐藤 リターンを数値化できないとしても、定性的にはどのように企業の持続的成長に貢献するのでしょうか。
シェ 企業が長期的視点からスピリチュアリティ・宗教・信条などを自らの成長に役立てる方法は3つあると思います。
1つめは、優れた経営人材の育成です。一般社員や管理職がスピリチュアリティや宗教に由来する行事や研修を通じて人知を超えた存在とのつながりを意識し、その教えを自らのリーダーシップに効果的に活用できるようになれば、優れたリーダーに成長することにつながるでしょう。
2つめが、経営理念の浸透です。経営理念は社員に方向性を示したり、やる気を与えたりするものですが、時として抽象的になりがちです。「人間尊重」とか「イノベーション」とか「自然との調和」とか、あまりにもコンセプトが大きすぎて、腹落ちするのは難しいでしょう。そんなとき、神道や仏教の教えを学んだり、行事に参加したりすれば、経営理念の意味をより具体的に理解することができます。
3つめが従業員同士の一体感の醸成です。個人の信仰や信条は尊重しつつ、スピリチュアリティや宗教に由来する定例行事に参加してもらえれば、従業員同士の一体感が高まるでしょう。これは私見になりますが、現代の若者は「つながる」ことをとても大切にしていますから、特に管理職や役員の皆さんにとっては若手社員との交流の機会にもなると思います。
スピリチュアリティへの理解が
リーダーにもたらす4つのメリット
佐藤 管理職や役員個人にとっては、どのようなメリットがあるのでしょうか。
シェ 世界のトップ経営者たちの経験によれば、スピリチュアリティ・宗教・信条の活用は次の4つの効用をもたらすことがわかっています。
まず1つめは、より良い意思決定をするための指針です。リーダーは、白黒つけられないグレーな状況の中、決断をしなくてはならない場面に多々、遭遇します。私の授業で講演してくれたトップリーダーたちも「何が正しいのか、本当に実行していいのか、判断がつかないようなときに、自らの宗教や信条が指針となり、決断する勇気を与えてくれた」と語っていました。
というのも、一般的に宗教や思想家などの教えは「人間にとって大切な価値とは何か」を伝えているものなので、難しい局面を打開するための指針として、非常に役立つのです。







