しかし、研究対象が古い言語に偏るという特徴がある。古文はわかるのに、現代語はわからないということがよくある。
要するに、漢文は少し習ったけれども現代の中国語はわからないという大多数の日本人みたいなことがそれぞれの言語で起こる。私の場合は、アイルランド語やウェールズ語は古文しかちゃんと勉強したことがない。
「読む」ことに特化した言語学者は
対面コミュニケーションが苦手
それに加えて、古い言語に関しては外国語学習の中でも「読む」技能が一番重要である。それ以外の「書く・聴く・話す」機会はあまりない。だから、現代語も一応ある程度勉強することはあっても、文字ベースの学習になることが多くなってしまい、会話表現などはどうしても疎くなりがちである。
「粘土板」とか「楔形文字」みたいな単語はわかるのに、「レジ」とか「テイクアウト」みたいな単語は知らなくて喋れないという、研究者以外ではほぼありえない事件が多発する。日常生活で使う単語ほど「これなんて言うんだっけ?」となりやすい。
とはいえ私も語学マニアの端くれ、せっかく現地に行くなら少しは現地語を使ってみたい。なので「クレジットカードで」みたいな簡単な表現は予習していく。そして実際に試してみたりする……のだが、私はそこまで実地のコミュニケーションで輝くタイプではない。結構ポンコツである。
こちらは言語の音が専門なので、現地語を喋る時も発音だけは割としっかりしたものになりやすい。しかし、そうすると「現地語ガチ勢」と勘違いされて、ものすごいスピードで現地語で返答されてしまうのである。
別にその言語の会話に慣れているわけではないので、当然全く聞き取れない。「調子に乗ってすみませんでした……」となってしまう。その夜は反省会になる。でもまあ使えているだけ何もしないよりはいいんじゃないかな、と思う。
ところで、何回も外国に行くと、なんとなく必須の会話表現がわかるようになってくる。外国語の会話表現のうち、一番重要なものは何だろうか。







