スパイが外交官に偽装する理由は大きく二つ。外交特権によって日本国内では逮捕されないことと、有力者との面会が容易なことだ。
OCは表向きには「1等書記官」などの官職を名乗っているが、スパイ活動では本国情報機関の指揮命令を受けている。軍服を着た「駐在武官」として勤務するOCは、裏側では軍情報機関の管理下にある。
先述したボガチョンコフ氏も、表向きは「在日ロシア大使館付の駐在武官」という立場で活動していた。
こうしたロシアや中国のOCは、現時点で日本に計50人ほど存在し、日本人や在日外国人のエージェントを使って日々情報収集しているとみられる。連絡や情報の伝達には匿名性の高いSNSを使い、報酬のやり取りは足がつきづらい暗号資産で行われることが多い。
一方で、実は日本も海外の大使館に情報要員を置いている。自衛官は「防衛駐在官(駐在武官と同義)」、警察官や公安調査官は「外交官」として赴任しているが、米国・中国・ロシアに比べるとだいぶ抑制的に活動していると言えるだろう。
警視庁公安部が手掛ける
地道なスパイ対策の実態
さらに、日本は「カウンターインテリジェンス」と呼ぶ、他国の情報機関やスパイによる情報収集活動を抑止するための防諜活動に力を入れてきた。
活動を担っているのは、主に警視庁公安部だ。特にロシアを担当する外事1課はゾルゲ事件(※)など数多くのロシアスパイを追い込んでいった伝統を持ち、尾行監視の技術も高い。
※「特派員として来日した記者」という名目で活動していたリヒャルト・ゾルゲ氏(ドイツ国籍)が、実はソビエト連邦のスパイであった事件。前身となる特別高等警察(特高警察)が摘発し、ゾルゲ氏には死刑が執行された。
警視庁公安部は「青ナンバー」と呼ばれる外交官車両で行動するOCを尾行したり、立寄先を調査したりといった地道な調査を繰り返し、その動向を把握。場合によっては、冒頭の事件のように捜査に踏み切る。







