ダイヤモンドで読み解く企業興亡史【サントリー編】#41

昨年、サントリーホールディングスで10年ぶりに創業家出身者がトップに就任する“大政奉還”があった。創業120年超の歴史を誇る日本屈指の同族企業、サントリーの足跡をダイヤモンドの厳選記事を基にひもといていく。連載『ダイヤモンドで読み解く企業興亡史【サントリー編】』の本稿では、「週刊ダイヤモンド」1989年5月20日号の記事「ビール夏の陣 100億本めぐる攻防 快進撃アサヒドライにストップがかかるか」を紹介する。アサヒビールが87年に日本初の「辛口(ドライ)」を打ち出したスーパードライを投入し、キリンビール1強のビール市場に巨大な地殻変動が起きていた。記事では、長らく夕日ビールなどともやゆされてきたアサヒの快進撃ぶりをリポートするとともに、キリンやサントリーの対抗策なども明らかにしている。(ダイヤモンド編集部)

アサヒがビール需要を掘り起こす
サッポロを抜き、キリンを追う

 国税庁がまとめた1988年の“お酒白書”が去る4月下旬に発表となった。その白書によると、国産と輸入合計の酒類課税数量は前年比5.9%増の845万1735キロリットル。酒類市場の規模は小売り段階で5兆6700億円、対する酒税徴収額は2兆1700億円に達した。

 その中でとりわけ好調であったのがビールで、課税数量は酒類平均の伸び率を上回る8.2%増の579万3000キロリットル。その規模は酒類全体の68.5%を占める。対するビール税は1兆3834億円、酒類全体の課税額の63%を負担、ビールの好調ぶりは国税庁を大いに喜ばせたというわけだ。

 実際に、ビール業界の88年におけるビール出荷量は573万キロリットル(課税数量とは統計が若干異なる)で、前年比7.7%増となり、このところ、対前年比の実績で85年には2.4%増、86年3.9%増、87年7.4%増と、尻上がりにビール需要が高まってきたものだ。

 基本的にはビールは低アルコールの健康飲料であり、一般家庭で生活のステージとして豊かに演出していくことが可能となった商品の一つだ。

 しかし、はっきりいってビール需要を掘り起こした演出家ないし主役はアサヒビールの“スーパードライ”である。アサヒのビール販売量は前年比で、85年横ばいであったのが86年12%増、87年34%増、88年72%増という破格の高い伸び率を示現したものだ。

 それが89年に入ってもいっこうに衰えようとしない。今年の1~3月の実績でも、前年同期に対しキリンが横ばい、サッポロが5%増、サントリーが2%減であるのに対し、アサヒは47%増とみられているからだ。

「週刊ダイヤモンド」1989年5月20日号「週刊ダイヤモンド」1989年5月20日号

 この1~3月の実績に対し、当然ながら異論はある。「今年は新商品ラッシュで、実際には2月の後半から3月にかけて新商品が出てくるので、1~3月では新商品の寄与率が低いから参考にはならない」という言い分もあり、今年の1~3月は昨年の延長線上にすぎないと主張する。対してアサヒは「ビール業界のトレンドはどうなっているかの点で数字は重要だ」と譲らない。

 ちなみに、88年の各社別シェアを紹介すると、キリン50.8%(87年57.0%)、アサヒ20.6%(同12.9%)、サッポロ19.8%(同20.5%)、サントリー8.8%(同9.6%)である。アサヒはサントリーを引き離し、サッポロを追い抜いてキリンに肉薄しようとしている状況変化となったのである。