馬鹿正直に全部出した会社が、一番叩かれる

 では、なぜこれほどまでに激しい非難が集中したのか。

 1つの要因は、開示の仕方にある。プルデンシャル生命は、(金融庁の指導があったからと考えられるが)過去30年分の事案をまじめに洗い出し、まとめて公表した。個別には軽微に見える事案も含め、すべてを並べた結果、「100人超」「31億円」という数字だけが独り歩きすることになった。

 これは、かつて2013年にホテル業界で起きた食品表示問題と酷似している。複数の事業者が同様の問題を抱える中、あるホテルグループは事案を詳細に調べ上げ、グループ全体が関与した47件について「施設名」「提供場所等」「メニュー名」「誤表示の内容」「利用人数」「販売期間」の項目を詳細に記した一覧表を作成し、説明した。

 その結果どうなったか。

「不正てんこ盛りの会社」として、記者会見で社長がつるしあげられた。そして、他社もほぼ同じようなことをしていたのに、その会社だけが、社会から特別に激しい批判を浴びることになったのである。

 これは日本社会では決して珍しい現象ではない。透明性が、必ずしも評価につながらない。この構造は、企業のコンプライアンス意識を歪める危険性をはらんでいる。

募集人という「独立した存在」の特殊性

 もう1つ、一般に誤解されやすい点がある。それが、生保営業における営業担当者、つまり「募集人」の位置づけだ。

 生命保険の募集人は、形式上は社員であっても、法制度上は高度な独立性を前提とした存在である。顧客開拓も関係構築も、基本的には募集人個人の責任で行われる。顧客は直接生命保険会社につながっているのではなく、あくまで募集人を通してつながっているのである(生保の募集人は証券営業や損保営業とは異なる地位を与えられている)。

 また生保営業において、基本的に顧客は会社から与えられるものではない。多くは、募集人自身が時間をかけて築いた人的ネットワークである。プルデンシャル生命が日本の大手生命保険会社とは異なり、広告宣伝費を抑え、その分をライフプランナーの報酬に振り向けてきたのも、この構造と無縁ではない。