だから、一部の報道にあるように、会社の顧客名簿を使って、その顧客に会社で扱っていない商品を販売したという印象を作り上げるのは適切とは言えない。

 また、今回の事案の多くは、保険業務の枠外で行われた私的取引である。通常の業務監査で事前に把握することは現実的には極めて難しい。

 もちろん、それで会社の責任が消えるわけではない。だが、「会社が組織的に詐欺行為を容認していた」と解釈するのも、実態から乖離している。

本当の問題は「倫理」ではない――ビジネスモデルの終焉

 では、今回の問題の何が本質なのか。

 それは、倫理の欠如ではない。「悪い社員がいた」で片付く話でもない(繰り返しになるが、今回の金銭詐取が犯罪ではないと言っているのではない)。本質は、ビジネスモデルの終焉である。

 プルデンシャル生命が成長した90年代からしばらくの間、日本の生命保険市場は彼らにとって明確なブルーオーシャンだった。画一的な商品を保険知識の乏しい営業部隊が販売する大手の生命保険会社と比べると、同社のコンサルティング型営業は頭一つ抜けていた。

 しかし、環境はすでに一変している。生命保険加入率はすでに80%を超え、新規開拓は困難になっている。商品の優位性はすでにかなり失われている。保険以外の金融商品の選択肢も爆発的に増加している。

 昔はライフプランナーくらいしか相談相手がいなかったが、今ではFP(ファイナンシャルプランナー)があちらこちらにいて、オンラインサービスその他が、個人向け助言を代替し始めている。そして何より見込み客となる若い人が増えない。

 この環境下で、プルデンシャル生命のような新規契約に強く依存するフルコミッション型営業は、構造的に成立しにくくなっている。

 ただし、過去の成功者は生き残れる。既存顧客と、その家族という資産があるからだ。だが、新規参入者は、同じやり方では食べていけない。結果として、経済的な焦りから、容易に倫理的境界線の逸脱が起こる。これは、個人の倫理の問題ではなく、設計の問題である。このまま放置しておけば、本当に多くの犯罪者を生み出しかねない構造なのである。