積水化学工業の社長に昇格する清水郁輔代表取締役専務執行役員(右)と加藤敬太社長 Photo by Ryuichi Kanayama
積水化学工業が2月17日、6年ぶりのトップ交代に踏み切った。3月に社長に就く清水郁輔氏(61)は、2030年度の売上高2兆円の達成に向け、最大3000億円規模のM&A(企業の合併・買収)を盛り込んだ成長戦略も打ち出した。2兆円目標の達成には足元から7000億円も上積みが必要となる。将来の成長の柱の一つが、軽くて曲がるペロブスカイト太陽電池だ。構造改革で築いた盤石の収益基盤を土台に、次世代技術への注力で「攻め」へ転じる意思表示といえる。特集『化学サバイバル!』の本稿では、社長交代会見の清水新社長の発言から成長戦略の青写真の全貌を探った。(ダイヤモンド編集部 金山隆一)
積水化学工業がトップ交代
2兆円達成への道筋とは
積水化学工業は2月17日、加藤敬太社長(68)の後任に清水郁輔代表取締役専務執行役員を3月1日付で充てる人事を発表した。加藤氏は代表権のない取締役会長に就く。今回のトップ交代は、長期ビジョン「Vision 2030」の折り返し地点として、2026年度から始まる次期中期経営計画の始動を見据えた戦略的な体制刷新といえる。
清水氏のキャリアはユニークだ。1987年に入社し、技術開発の現場からキャリアを積み上げた清水氏は、米ロサンゼルス駐在時に赤字子会社の再建を託され、周囲の猛反対を押し切って方針を大転換。周囲から「朝令暮改」と批判されながらも、最終的には最高益更新へ導いた実績を持つ。
加藤氏は清水氏を「技術開発からマネジメントまで精通し、果敢にリスクを取れるリーダー」と評する。同日開かれた記者会見では、米国での苦境時に歌手、岡本真夜さんの『TOMORROW』を聴き自らを鼓舞したエピソードも披露。論理と現場力の両輪で経営を担う姿勢をにじませた。
会見で清水氏は今後の成長戦略も明らかにした。その30年度までのロードマップには、「巨大な余白」があった。目標とする売上高2兆円のうち、既存事業の成長で1.5兆~1.6兆円、新事業(革新領域)で2000億~2500億円を積み上げても、なお2000億~3000億円が不足する。この“ミッシングピース”を埋めるのがM&Aである。
現在の積水化学の事業は大きく3カンパニー体制から成る。セキスイハイムなど住宅事業を担う「住宅カンパニー」、インフラや配管材・建材を中心とする「環境・ライフラインカンパニー」、そして半導体材料や医療関連製品など高付加価値分野を担う「高機能プラスチックスカンパニー」だ。
足元の収益ドライバーは、高機能プラスチックスカンパニーに属する半導体関連材料や車載・エレクトロニクス用途の高機能樹脂。営業利益率もこの領域が最も高い。一方、売り上げ規模で最も大きいのは住宅事業で、安定収益源として全社を支える構造だ。環境・ライフラインは公共投資や更新需要を背景に底堅い。
つまり同社は「安定収益の住宅・インフラ」と「高収益の機能材料」という両輪で成り立っている。しかし、いずれも既存事業の延長線上では30年度に2兆円規模にはね上げるには限界がある。だからこそ、革新領域とM&Aによる非連続な成長が不可欠になる。
では、清水氏は2兆円に向けた道筋をどう描いているのか。不足分を補う3000億円のM&Aの具体像、そして他社が苦戦する次世代太陽電池の商用化への方策。米国での赤字子会社再建という“修羅場”をくぐり抜けた次期トップが示す積水化学工業の未来図を、次ページで詳しく読み解く。







