
三井化学と出光興産、住友化学の3社は9月10日、国内の汎用樹脂「ポリオレフィン」事業を統合すると発表した。2026年4月をめどに三井化学と出光の出資会社、プライムポリマーに住友化学の同事業が合流する。中国の化学品の過剰生産で市況が悪化する中、石油化学事業の競争力を高める狙いだが、今回の統合はさらなる石化事業の再編を促すほか、大手化学による石化事業切り離しや高機能化学品へのシフトにもつながる起爆剤となりそうだ。特集『化学サバイバル!』の本稿では、今回の統合が業界に与える三つの大きなインパクトに加え、今後の再編の見立てを明らかにする。(ダイヤモンド編集部 金山隆一)
三井化、出光、住化が樹脂事業を統合
21年ぶりの大型再編も株価は反応せず
「(石油化学事業の)再編・統合に向けた一つのステップ。これから幾つものプロジェクト、ステップを踏んで強化していく」。三井化学が、出光興産と住友化学との汎用樹脂事業の統合発表を受け、9月10日に開いた記者会見で、橋本修社長はそう強調した。
三井化学が65%、出光が35%出資する汎用樹脂生産会社、プライムポリマーと、住友化学のポリオレフィン事業を統合させる。プライムポリマーは自動車部品に使われるポリプロピレン(PP)を年産126万トン、レジ袋などに使われるポリエチレン(PE)を同55万トン生産。住友化学はPPを同33万トン、PEを17万トン生産する。
統合により国内のPPとPEの生産設備を1系列ずつ停止する合理化なども進め、80億円以上のコスト削減効果を目指す。新会社の出資比率は三井化学52%、出光28%、住友化学20%となる計画。売上高は単純合算で3873億円(2025年3月期)となる。
ポリオレフィン事業の再編は05年の三井化学と出光興産のプライムポリマー発足以来、21年ぶりの動きとなる。三井化学は今年5月に石化事業を分社化する方針を打ち出し、9月に旭化成、三井化学、三菱ケミカルグループの3社で水島(岡山県)と大阪に分かれるエチレンセンターの生産設備再編を目指し、有限責任事業組合(LLP)を設立すると発表。石化事業の再編を加速させている。
三井化学にとって今回の統合は自信を込めた一手だったといえる。会見に、石化事業を担当するベーシック&グリーンマテリアル事業本部長の伊澤一雄専務だけでなく橋本社長まで出席したことが、それをあらわしているといえる。ところが、株式市場はほとんど反応しなかった。発表当日の三井化学株の終値は前日を下回った。
市場の反応は限られたものの、実は今回の統合は化学業界にとって大きな意味を持つとみる向きは少なくない。石化事業のさらなる再編を促す起爆剤となるだけでなく、化学メーカーが事業ポートフォリオを大きく変える動きを後押しする可能性があるのだ。次ページで、今回の統合が持つ意味を解説するほか、今後起きる可能性がある再編を予想。化学業界に与える三つの大きなインパクトも明らかにしていく。