米国とイランのはざまで揺れる高市政権が、今こそ学ぶべき「田中角栄の外交決断」1973年、来日した米国務長官のキッシンジャー(左)と会談する首相の田中角栄(中央)。右は外相の大平正芳(東京・首相官邸) Photo:JIJI

「大統領の気持ちをわしづかみにするしかない」。首相の高市早苗と米大統領のトランプとの日米首脳会談を控えて高市の外交ブレーンの1人はこう語っていた。予測不能のトランプではいくら準備をしたところで始まらないからだ。外相を長く務め、トランプと面識のある元首相の岸田文雄も打つ手なしとみていた。「変な約束をするわけにもいかないし、かといって怒らすわけにもいかない。かわすしかない」。

 こうしたアドバイスが高市に届いたのかもしれない。ホワイトハウスでトランプと向き合った高市は大柄なトランプの胸に飛び込むように抱き付いた。さらに大統領執務室に場所を移して始まった首脳会談でも、高市はトランプを終始持ち上げ続けた。

「世界中に平和と繁栄をもたらすことができるのはドナルドだけだ。私は諸外国に働き掛け、しっかり応援したい」

 そこにはトランプがイスラエル首相のネタニヤフと連携して一方的に奇襲攻撃した責任を問う姿勢はみじんも感じられなかった。それどころかイランに背を向ける立場を明らかにした。

「わが国として、ホルムズ海峡の封鎖、航行の安全を脅かす行為や周辺地域に対する攻撃といったイランの行動を深刻に懸念し、非難する」

 伝統的にイランとの友好関係を維持してきた「外交的資産」(自民党幹部)を失う懸念も膨らむ。高市側近の中にも過度なトランプへの傾斜にブレーキをかける声もあった。日本にとって最も大切な「ボトムライン」を守ることだった。イラン情勢の中でのボトムラインは日本に運ばれる石油の9割が通過するホルムズ海峡の安全航行を確保することだ。すでにイランによる事実上のホルムズ海峡封鎖は1カ月近くになる。日本のエネルギー資源の生命線を断たれることにつながる事態が進行中だ。このため高市は世界に先駆けて石油備蓄の放出を決定した。