イラン“停戦合意”後も資源価格高止まり、中東貿易縮小で日本のGDP「0.6%下振れ」の可能性ハメネイ師が米イスラエルによる共同攻撃で殺害されてから40日目の追悼式典に集まるイランの人々=4月9日、イラン・テヘランで Photo:Majid Saeedi/gettyimages

世界経済への「3つの波及経路」での影響分析
「停戦合意」でもアジアを中心に景気下押し圧力続く

 米国、イスラエルの軍事攻撃開始から2カ月目に入ったイラン情勢は、4月8日に、米国とイランの間で、イランが封鎖中のホルムズ海峡の通航再開を条件とした「2週間の暫定停戦」の合意に至った。

 これを受けて原油価格(WTI先物価格)は、1バレル90ドル台まで急落し、日米欧の株式市場も反発するなど、金融市場では「最悪期は通過した」との見方が広がった。

 しかし、今回の合意は恒久的な和平を保証するものではなく、停戦合意後も中東各地で警戒態勢が続いている。イラン側は、イスラエルが停戦合意後にレバノンの親イラン組織を攻撃したことに反発し、ホルムズ海峡の実効支配を続けており、通航の正常化は依然として見通せない状況だ。

 レバノンを含む停戦やイランのウラン濃縮等を巡って米国・イランの間で認識に隔たりがあり、戦闘終結に向けた交渉はなおも不確実性が大きいと言わざるを得ない。

 今回の停戦合意は「危機の収束」というより「危機の一時停止」と位置付けるのが適切であり、「地政学リスクの解消」を見込むのは時期尚早といえるだろう。

 軍事衝突の激化という最悪シナリオがいったん後退したことで、原油価格や株価は一定程度巻き戻される可能性がある一方、エネルギー・石油化学関連施設の損傷等に伴う資源供給網や国際物流の混乱、企業の在庫・調達行動の慎重化といった影響は残存する公算が大きく、世界経済は「平時」に回帰するとは当面考えにくい。

 今後の焦点は、停戦の延長・恒久化に加え、ホルムズ海峡の安定的な通航とエネルギーなどの資源供給体制の回復がどこまで進むかだ。

 先行きについて正確に「予測」を行うことは極めて難しいが、本稿では、実体経済への主要な波及経路である(1)中東からの輸入、(2)中東への輸出、(3)金融市場の3つの視点から、世界経済・日本経済への影響を考察することとしたい。

 過去の紛争局面における原油価格の動向や、エネルギー供給網や海上輸送の不確実性は残る点、企業の在庫積み増し等の行動変化も需給の引き締まり要因として作用する可能性がある点等を踏まえ、資源価格が軍事作戦開始前比で2割程度高く、中東との貿易量が同2割程度下振れる状況が続くシナリオを仮に想定して試算すると、中東への貿易やエネルギー依存度が高い日本やアジアは、エネルギー価格上昇や中東産の原材料不足で悪影響を受けやすい構造にある。

 3経路の影響全体で見るとインドは▲0.9%程度、韓国は▲0.8%程度、日本も▲0.6%程度GDPが下押しされる計算となる。業種別では、化学や金属、輸送用機械、運輸サービスなどへの影響が顕著となることが見込まれる。