メディア興亡Photo by Shuhei Inomata

東京本社の移転や新聞発行地域の縮小が取り沙汰されている五大紙の一つ産業経済新聞社が、5月までに夏季賞与額を決定した。ダイヤモンド編集部は賞与額の詳細や、労使協議に関する内部文書を入手。浮かんできたのは、相次ぐ社内情報の流出に怒りをあらわにする役員たちや、社員の心が会社から離れていく厳しい現状だった。連載『メディア興亡』の本稿では、労使協議で近藤哲司社長(当時)が呼び掛けた注意喚起の詳細や、幹部経験者の無神経な発言なども明らかにする。(ダイヤモンド編集部 猪股修平)

東京本社の移転や東北からの撤退を発表
社外秘の全社集会は当日の夜にリーク

 4月下旬、産業経済新聞社総務本部は全社員に向けてメッセージを送信した。

 産経新聞社の経営方針に関する説明を行う全社集会を5月1日(金)に実施します。内容は当日お伝えします。大切な話ですので、可能な限り参加するようにしてください。以下概要です。

【日時】5月1日(金)14時(開場13時半)
【場所】東京会場:大手町サンケイプラザ4階ホール(東京サンケイビル内)
大阪会場:大阪本社8階802、803会議室
【対象】産経新聞社:正社員、専門正社員、契約社員、嘱託、出向受入者
関連会社:取締役(社外は除く)、本社からの出向者
【内容】4月28日の取締役会で機関決定した会社の経営方針について、近藤哲司社長から説明・共有、資料投影、質疑応答あり

 さらに、以下のような注意書きが続いた。

・今回の全社集会は社外秘です。5月1日に集会が行われることや、集会実施後も集会が行われたこと、集会で説明された内容について社外に口外しないようにしてください。このメールも転送禁止です。

・入場時には社員証による確認をします。必ず社員証を持参してください。不携帯の方は参加できません(関連会社取締役で社員証をお持ちでない方は受付にお申し出下さい)。

・参加できなかった方のために、後日説明内容を共有します。共有方法については改めて説明します。

 この社員集会で明らかになったのは「東京本社機能の品川への移転、大阪本社のオフィス適正化、東北地方で産経新聞とサンケイスポーツの発行から撤退するという内容だった。経費削減が目的で、将来的にAI(人工知能)を活用するシステムを構築するために資金を投じる」(産経新聞東京本社の関係者)というものだった。

 社側は門外不出の徹底を呼び掛けたものの、全社集会があった5月1日の夜には一部メディアが「東北地方の撤退」「品川シーサイドへの移転」といった内容を報道で詳らかにした。社の呼び掛けが順守されなかった証左である。

 こうした状況に5月、夏季賞与について話し合う労使合同会議において近藤哲司社長(当時)がコンプライアンス意識の低さを指弾。同時に、社員たちが心理的に離反している現状がこの会議で明らかになった。次ページでは内部文書や関係者の証言から、産経社内で起きている「しらけムード」の実像に迫る。