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「完璧な戦略を提唱した。しかし、実行フェーズでは顧客企業の社内政治やリソース不足に阻まれ、結局何も変わらなかった」。コンサルタントであれば、一度はこのような体験をしたことがあるかと思います。本稿で最も伝えたい結論は「アドバイザーではなく、プロ経営者(当事者)への扉が、今かつてないほど大きく開かれている」ということです。その選択肢が「PEファンドの投資先企業におけるCxO(CSO/COO)やバリューアップ責任者」です。企業の変革を内部から指揮し、エグジット(再上場や売却)という明確なゴールに向かって企業価値を劇的に高める。そして、その果実を自らのキャピタルゲインとして手にする。長期連載『コンサル大解剖』内の連載「コンサルキャリアの新潮流」の本稿では、昨今のPE市場のダイナミズムをひもときながら、コンサルタントがネクストキャリアでいかに輝けるか、その全貌と戦略を解説します。(XG Partners シニアプリンシパルコンサルタント 小川世爾)
「コンサル→PE投資先企業」転職トレンド
昨年比3~4割増で「キャリアパス」に定着
2025年の転職市場を総括すると、コンサルティングファームからPE(プライベートエクイティ)ファンドの投資先企業への転職は急増しており、昨年対比でも3~4割程度増えている印象です。もはや一部のシニア層だけの特権ではなく、マネジャーからプリンシパルクラスにおける「王道のエリート・キャリアパス」として完全に定着しました。
このトレンドにおける最大の変化は、求められるポジションに対する実行(オペレーション)への比重が高まったことです。数年前まで、コンサル出身者の主戦場は「CSO(最高戦略責任者)」や「経営企画室長」として、中期経営計画の策定やM&A(ロールアップ)のソーシング戦略を描くことでした。
しかし、25年は、戦略を描くだけの人材の需要は一巡し、より泥くさい実務を統括する「COO(最高執行責任者)」や、現場に入り込んでPMI(M&A後の経営統合)とDX(デジタルトランスフォーメーション)を推し進める「バリューアップ・ディレクター(VCAなど)」へのニーズが急増しました。
総合系ファームでサプライチェーン改革や基幹システム刷新(ERP導入)を泥くさくリードしてきた人材や、戦略ファームでコスト削減の実行支援までやり切った経験を持つ人材が、数千万円単位のパッケージとストックオプション(MIP)を提示されて次々と移る事例が増えています。
なぜ25年にこれほどまでに実行力のあるコンサルタントがPE投資先から渇望されたのか。その背景には、日本のマクロ経済とPEファンド業界が直面している構造的な転換があります。
第一に、金融エンジニアリングの限界です。これまで多くのPEファンドは、メガバンクから巨額のLBO(レバレッジド・バイアウト)ローンを低金利で引っ張り、レバレッジを効かせることで高いリターン(マルチプルアービトラージ)を出してきました。しかし、日本でもついに金利のある世界が到来し、ただ借金をして会社を買うだけではリターンが得られなくなりました。ファンドが勝つためには、投資先企業の純粋な稼ぐ力(EBITDA)を物理的に引き上げる本質的なバリューアップが絶対条件となったのです。
第二に、ミッドキャップ市場(中堅・中小企業)の拡大です。事業承継問題や大企業のカーブアウト(非中核事業の切り出し)により、売り上げ数十億~数百億円規模の優良な地方企業や老舗企業が次々とファンドの傘下に入っています。
こうした企業の多くは、素晴らしい技術や顧客基盤を持ちながらも、経営管理は昭和のままで、デジタル化は遅れ、人事評価制度も形骸化しています。ファンドの投資委員会が描いた100日プランを、このレガシーな現場組織にインストールし、反発を抑え込みながら利益率を改善していく。この結節点を担えるのは、過酷なクライアントワークで鍛え上げられたコンサルタントしかいないと、市場全体が気付いたのです。
次ページでは、26年の「コンサル→PE投資先企業」転職のトレンドに加え、キャリアや待遇の面での転職の四つのメリットについて解説していきます。







