コンサル大解剖Photo:PIXTA

「アドバイザーとして助言するだけでなく、事業の当事者になりたい」「可能な限り年収を落とさずに、ワーク・ライフ・バランスを改善したい」。コンサルティングファームに在籍する多くのプロフェッショナルの転職理由です。もし、総合商社に転職すればこの願いは成就することでしょう。しかし、総合商社のオファーを勝ち取れる人は一握りです。さらに、転職後のミスマッチも目にしました。長期連載『コンサル大解剖』内の連載『コンサルキャリアの新潮流』の本稿では、転職支援に携わってきたヘッドハンターの視点から、商社への転職を目指すコンサルタントが知っておくべき実態を解説します。(XG Partnersプリンシパルコンサルタント 渡辺多加史)

「コンサル→商社」転職の大前提
成功する人は「当事者意識」を持つ

 総合商社でのキャリアを始めるには、中途採用選考の狭き門をくぐり抜ける必要があります。その際、「総合商社」をひとくくりにして扱い選考対策を立てることは、根本的な誤りといえます。各社には長きにわたって培われた企業文化があり、その個性豊かな文化が各社の競争優位性でもあるため、求める人材像が大きく異なるのです。

 例えば、階層構造が明確でチームとしての一体感があり、その組織の考え方、動き方を何より重視する商社があります。あるいは対照的に、トップダウンではなくボトムアップで事業をつくる社風から、「君は何がしたいんだ?」と常に個人の意思を問われ続ける商社もあります。また、会食での振る舞い方の徹底的な指導から始まる現場主義と、交渉事においては妥協を許さず戦い抜く姿勢が顕著な商社もあります。

 さらに付け加えれば、同じ会社内であっても、事業セグメントや本部、ひいては課の単位でカルチャーは千差万別です。どの会社に所属するかというだけでなく、どの本部、事業室に配属されるかで、キャリアの質が大きく変わる点は認識しておくべきかと思います。

 志望先のカルチャーを理解せずに、どこに対しても同じエントリーシート、同じ自己PRで臨むことが、コンサル出身者が最初につまずきやすいポイントです。エピソードや強みを応募先に応じて適切にカスタマイズする必要があります。

 もう少しだけ選考対策の話を続けます。やはり、商社で成功するのは「当事者意識」を持つ人だと思います。意思決定構造が極めて重層的な商社において、構想した内容を実際に実行に移すには、組織を動かすための多大な労力と人間関係のコストが生じるため、何かを「成し遂げたい」という内発的な動機が求められるからです。

 故に、各商社の面接ではおしなべて「意思を持って完遂したことは何か」と、主体性(オーナシップ)を問うてきます。各社、各部門の個性を踏まえた上で、これまでのキャリアの中から「自ら意思を持って動いた場面」を切り出し、適切に加工して語れるかどうかが重要となります。

 さらに、総合商社の中途選考における不合格の主因は「経験・スキルの不足」よりも「カルチャーアンマッチ」、より正確には「(オーナーシップを含む)コンピテンシーのPR不足」によるところが大きいと理解しています。例えば、某商社の面接官が見たいコンピテンシーは、「前例のない取り組みによって成果を創出した事例」です。このような前提知識があれば自己PRの内容も変わります。

 ただ、「泥くさく行動することでクライアントからの信頼を勝ち取った」とするだけでなく、「通常は二つのロジックで検証する工程に対し、自身の判断でトップティアファームと同等の4系統のマルチロジック検証を実施。妥協のない分析姿勢が厳しいクライアントから評価され、強固な信頼を獲得した」というように、相手の好みに合わせたPRができるようになります。

 次ページでは、商社に転職後に生かせるコンサルスキルに加え、ミスマッチに陥りやすいケースも解説します。また、「総合商社=ハードワーク」のイメージがある働き方の実態や、外資系コンサルを上回る可能性もある年収水準についても明らかにしていきます。