Photo by Masataka Tsuchimoto, Fumiya Suzuki
ホルムズ海峡の封鎖長期化に伴う原油高という追い風で、石油元売り大手2社の2026年3月期の連結純利益は増益となった。その陰で両社は近年力を入れてきた脱炭素投資を縮小する動きを加速させている。特集『エネルギー危機、インフレ、人手不足で明暗!通期決算「勝ち組&負け組」【2026春】』の本稿では、各セグメント別のROA(総資産利益率)などから両社の本当の“稼ぎ頭”と“足手まとい”の事業を可視化。両社が脱・脱炭素という大転換を進める理由を明らかにする。(ダイヤモンド編集部 鈴木文也)
原油価格上昇で逆転増益の裏で
「自動車業界のEV失速」に似た大誤算
原油価格の急上昇が、石油元売り大手の好決算を演出した。ホルムズ海峡封鎖の直前、2026年2月27日時点では1バレル=71.81ドルだったドバイ原油価格は、封鎖後の3月19日には137.82ドルへと高騰。5月時点でも100ドル前後という高値圏で推移しているためだ。
最大手のENEOSホールディングス(HD)は26年3月期決算の連結純利益が前期比14%増の2587億円だった。
本来、ENEOS HDは厳しい決算を予想していた。海運事業は資産の一部売却などで2016億円の一過性利益を見込んでいたものの、その他の事業の業績は横ばいか減少を見込んでいた。前期に計上したJX金属の株式売却益が剥落するため、第3四半期時点では通期見通しは「純利益は前期比40.3%減」としていた。ところが、期末にかけて原油価格が急騰したことで在庫評価損益が劇的に改善し、業績を大きく押し上げる結果となったのだ。
業界2番手の出光興産も同様だ。原油価格の急騰による在庫評価損益の改善額が、石炭価格の下落による損失を上回った。さらに、豪州の石炭鉱山の権益追加取得に伴う取得益も加わり、同社の連結純利益は前期比65%増の1719億円と大幅増益で着地した。
原油価格の変動という外部環境によって業績が左右されるのは、石油元売りの宿命といえよう。ただ、ここで見過ごしてはならないのは、中核事業が追い風に乗った裏側で、再生可能エネルギー事業がまたしても赤字に陥ったという事実だ。両社は世界的な脱炭素の潮流の中で、再エネ事業に力を入れてきたが、その勢いは急激に失速している。
この構図は、自動車業界の動きと酷似している。脱炭素の象徴であるEV(電気自動車)の普及を見込んで投資を加速させていた自動車各社は、ここにきて世界的な普及の急ブレーキを前に相次いで方向転換を余儀なくされている。EVの開発中止に追い込まれ、巨額の減損を計上したホンダはその典型例だろう。これと全く同じ構造の大転換が今、石油元売り業界でも起きているのだ。
次ページでは、詳細な財務データを基に、2社共通の“頭痛の種”となっているセグメントの実態を解説。加えて、両者が描き始めた「原点回帰できっちり稼ぐ」ともいえる脱炭素に逆行する動きについて分析していく。







