エネルギー動乱出光興産の新社長、酒井則明氏 Photo by Masataka Tsuchimoto

ガソリンの需要減少、カーボンニュートラル対応、地政学リスクなど、懸念事項が山積の石油元売り業界。業界2位の出光興産の新社長に4月に就任した酒井則明氏にインタビューを敢行した。長期連載『エネルギー動乱』の本稿では、酒井氏へのインタビュー前編として系列ガソリンスタンドの展望やガソリン暫定税率廃止の影響などを語ってもらった。(聞き手/ダイヤモンド編集部 土本匡孝)

旧出光興産と旧昭和シェル石油
経営統合から6年「融和進んだ」

――4月に新社長に就任しました。

 前社長の木藤(俊一氏)の時代に示した中期経営計画から大きな変更はありません。もちろん細かい点は日々環境が変化するので(修正します)。一番は米国のトランプ政権の相互関税。世界規模で動揺が走っています。

 経営で注意したいのは、さまざまな意味でバランスを重視することです。例えば石油を中心としたエネルギーの安定供給はもちろんですが、やはりカーボンニュートラル社会の実現に向けてしっかりと必要な準備を進めていかないといけません。もう一点、(注意したいのは)人を中心とした経営。創業者が「資本は人」と言っていた通りで、木藤前社長も「人が中心の経営」と言ってきました。

――バランスと言えば旧出光興産と旧昭和シェル石油。2社は2019年に経営統合しましたが、社内バランスは今も気にしているのでしょうか?

 両社は会社の風土としては、違ったものを持っていました。私は旧出光興産出身。旧昭和シェル石油は外資系でもありましたから非常に仕事の進め方が合理的。風土の違いをシナジー効果としてプラスにできるように経営陣は当時から考えていました。社員の融和を最優先に取り組んできたつもりで、思ったよりも融和は進んだと感じています。

――役員の数は現在、旧出光興産側が多いです。これはバランスを意識した結果ですか。あるいは実力主義?