林陽一・JX金属代表取締役社長Photo by Masato Kato

今年3月19日、ENEOSホールディングス(HD)の完全子会社だったJX金属がプライム上場を果たした。JX金属は、銅資源の会社から半導体・情報通信材料のグローバルニッチトップに生まれ変わりつつある。林陽一社長を直撃し、かつての親会社であるENEOSHDとの関係や、今後のM&A(企業の合併・買収)戦略を語ってもらった。(ダイヤモンド編集部 今枝翔太郎)

上場後も元親会社ENEOSが株式4割を保有も
「両社にシナジーはない」と断言

――3月19日の上場時の公開価格は820円、初値は843円でした。その後浮き沈みを経て、現在の株価は800円前後で推移しています。

 公開価格の820円を一つの目安としています。もちろん株価が上がればうれしいですが、気にしすぎないように意識しています。

 まずは当社の名前を広く認知してもらい、どんな会社なのかを知っていただければ、株式市場での評価はついてくると思っています。「銅の会社」と見られがちなので、成長のコアが半導体・情報通信材料にあることをより発信していきたいですね。

 上場後、戦略的な投資を行い、それによって得られた利益を元に有利子負債を削減していきます。上場前の2023年度は2.6倍だったNet Debt/EBITDA(〈有利子負債-現預金《ENEOSグループ金融短期貸付金含む》〉÷EBITDA〈営業利益+減価償却費〉により算出)を、27年度末には1.5倍未満にまで圧縮します。

――親会社だったENEOSホールディングス(HD)は、JX金属株式の半分以上を売却しましたが、現在も4割程度の株式を保有しています。

 当社の立場から見ると、ENEOSHDにこれだけの株式を持っていただいていることの明確なメリットはないと思います。

――ENEOSHDに保有比率をもっと下げてほしいということでしょうか。

次ページでは、林社長が元親会社ENEOSHDとの関係性を詳しく語るとともに、事業ポートフォリオ戦略を力説する。JX金属は、半導体の配線形成に使われる金属の薄膜材料「スパッタリングターゲット」で世界シェア6割を誇るトップメーカーだ。成長領域を伸ばすためのM&A戦略が明かされる。林社長がトランプ政権の施策をどう見ているかも注目だ。