2007年、オーストラリアの投資銀行であるマッコーリー・グループが、羽田空港ターミナルビルを所有する「日本空港ビルディング」(東証1部上場)の株式約20%を取得したことが発覚。それを受け、国土交通省は外資出資規制を定めた改正法案を提出したが、内閣でも議論は紛糾。福田首相の指示で閣議決定が先送りされ、法案は事実上見送られることとなった。
そもそも空港外資規制とは、成田国際空港会社や羽田空港のターミナルビル運営会社など、空港関連会社に対する外資の出資比率を法律で規制しようというものであり、「空港整備法」の改正がそれにあたる。空港を管轄する国土交通省は、「安全保障上問題がある」として、外資の出資比率を「議決権ベースで3分の1未満」に抑えることを目指し、改正案を提出した。しかし、その是非をめぐり、対日投資の冷え込みを懸念する金融庁だけでなく、渡辺喜美金融担当相をはじめとする現役閣僚からも反対の声が噴出した。先述した通り、閣議決定も先送りされ、問題は長期化する様相を見せている。今後、霞が関と永田町では水面下で「空港外資規制」の議論が続くであろう。
実は日本での実績がある
マッコーリー・グループ
マッコーリーとは何者か――。私から見れば比較的“筋のいい”株主である。日本ではあまり知られていないかもしれないが、空港や高速道路などのインフラへの投資を得意にしている投資銀行であり、オーストラリアでは最大である。高速道路では世界的なネットワークを持っており、すでに日本でも実績がある。東急電鉄の「箱根ターンパイク」、近鉄の「伊吹山ドライブウェイ」を買い取り、「箱根ターンパイク」においては、命名権を東洋タイヤに供与し、『TOYO TIRESターンパイク』として運営。様々な手法で収益改善を図り、東急時代には赤字だった同社を黒字に変えている。
また、これらの投資は日本政策投資銀行と共同のファンドで行なっており、そういう意味からも日本に馴染みのある投資銀行である。いわゆる“青い眼”で日本の事情がよくわかっていないというのではなく、日本の企業と非常にうまく手を携えてやってきたという外資企業なのである。さらに、彼らがインフラに投資していくという意味では、日本の空港に関心を持つということも十分にありえることだろう。
空港の「不動産屋」
をめぐる駆け引き
話を「空港外資規制」に戻そう。今回問題になっているのは、「空港」の民営化ではない。「空港ビル」という会社の話なのである。それが「日本の空港を守れ!」といったように、混同されて議論されているフシがある。「空港」自体は、独立行政法人が保有しているのであって、「空港ビル」は空港の中にある売店や食堂、駐車場をはじめとした、いわゆる「不動産屋さん」なのである。その不動産屋を守ることになぜそこまでこだわるのか。冬柴国土交通大臣が「守らなければならない!」と言って、特別な立法をしてまで守るべきものなのか、もっと議論されていいはずである。