21日の参議院選挙の結果は、大方の予想通り連立与党の圧勝となり、これで衆・参の「ねじれ」が解消したことになる。安倍首相は、選挙期間中、憲法改正や教育改革といった持論は極力封印し、政権奪還後7ヵ月間の経済の活性化をアピールし、いわゆる「アベノミクス」の継続を求めてきた。

第一、二の矢は時間稼ぎ

 確かに「次元の違う金融政策」は円安・株高を通じて、資産効果による消費増を生んでおり、「切れ目のない財政出動」は実需を底上げした。そのため、日本の経済成長率は久し振りに高いレベルを達成しそうな勢いである。しかし、筆者がかねてより指摘しているように、これらの政策、つまり「第一の矢」と「第二の矢」は、経済が自立的に回復するまでの間の時間稼ぎでしかない。

 すなわち、「次元の違う金融政策」と称して如何に日銀が銀行から国債を買い上げたとしても、それは企業の新規資金調達に直接結びつくものではないし、現に銀行の貸出行動が大幅に改善したという兆しはない。実現しているのは日銀当座預金の大幅な増加以外は、「インフレ期待」という捉えどころのない概念の浸透に過ぎず、この「インフレ期待」が高まれば、名目金利からインフレ期待率を差し引いた「実質金利」は低くなるはずだ、という漠然としたものに過ぎない。

 折しも米国の量的緩和縮小観測もあって円安が進行しており、輸入物価の上昇を通したインフレの兆しは見られるが、輸出数量が顕著に増える兆候はない。すなわち、単に「悪い物価上昇」が実現しつつあるだけのようにも見える。この点は、選挙戦を通して民主党など一部野党が訴えてきたことにも一理ある。

 財政出動についても、自民党は、民主党政権時代のバラマキを改めたというが、経済効果的には財政出動は所詮バラマキであり、どうバラマキを行なおうが、経済効果に大差はない(経済学的に正確に言えば、減税や給付といったバラマキは、消費性向〈増加所得のうち消費に回す分の割合〉が低いと効果は限定的であり、一方で、公共事業の形のバラマキの方が消費性向に左右されず「乗数効果」があるかもしれないが、その乗数効果は近年大きくない)。むしろ、大型の財政支出によって財政収支が悪化しており、財政健全化が遠のいたように見えなくもない。