ソニーG、ブシロード、GENDA…ゲーム・アニメ・漫画「5兆円」コンテンツ産業で注目の知財(IP)企業は?【厳選9銘柄】Photo:PIXTA

ゲーム、アニメーション、漫画など、日本のコンテンツは国際的な競争力を持っている。かつてはサブカルチャーと捉えられ、産業面で重視されてきたとは言い難かったが、いまでは、ビジネスで莫大な収益を生み出すIP(知的財産)として見直されている。日本政府も「クールジャパン」として後押しするIP。その供給企業が株式市場で注目を集めている。(QUICK Market Eyes コメントチーム 阿部哲太郎)

IPの競争力強化は国策
海外売上高は5兆円超

 アニメやゲームを中心に海外で日本のIP(知的財産)コンテンツの人気が高まっている。世界に通用する強力なIPを持つ日本企業が株式市場で存在感を増している。

 今年7月に公開され、日本だけでなく北米でも興行収入の記録を塗り替えた人気アニメ「鬼滅の刃」の映画最新作「無限城編 第一章 猗窩座(あかざ)再来」は、「ジャパニーズアニメーション」の価値の高さを見せつけた。

 同作の制作を手掛けたのは、原作漫画の版元である集英社とソニー・ミュージックエンタテインメントのアニメ制作子会社アニプレックスなどだ。また、国内配給を東宝とアニプレックス、北米での配給をソニー・ミュージックエンタテインメントと、ソニーグループの米国子会社が担当するなど、ソニーグループの企業が制作と配給の両面で主要な役割を担った。

 アニメと並んでクールジャパンのけん引役といえるゲームでも、世界的ヒット作が出ている。2022年に発売されて以降、国内外でユーザーを獲得し続け、今年4月時点で世界出荷本数が3000万本を突破したアクション・ロールプレイングゲーム(RPG)の「エルデンリング」は、バンダイナムコホールディングス(バンナムHD)傘下のフロム・ソフトウェアが開発した。

 メディア・コンテンツ分野のリサーチを行うヒューマンメディアが発表した23年の日本のコンテンツの海外売上高は5兆7769億円となった。経済産業省がまとめた「新たなクールジャパン戦略」で33年の海外売上高の目標を20兆円と設定している。

 日本の強みであるIPの競争力強化はすでに国策となっている。6月に政府が公表した「知的財産推進計画2025」では、今後に向けた戦略として「IPトランスフォーメーション」を掲げ、競争力強化やAIなどの活用、グローバル市場の取り込みなどが定められている。

 日本貿易振興機構(ジェトロ)は、7月に米ロサンゼルスで開かれた「アニメエキスポ2025」にアニメや漫画など日本企業12社が出店するパビリオンを設置し、コンテンツを発信した。例年よりも日米の業界関係者がパビリオンを訪れ、日本企業に対する関心の高まりが伺えた。

 10年代以降のネットフリックスやアマゾンプライムビデオなど動画配信プラットフォームの普及で日本のコンテンツの海外での視聴機会が大きく広がった。加えて多様性を認める価値観の広がりで、アイドル、俳優、キャラクター、タレントなど、自分が熱狂的に好きな人やモノを応援する「推し活」や、大人になってもカルチャーを楽しむ「キダルト」(キッズとアダルトを組み合わせた造語)などの価値観が肯定的に受け入れられる風潮も追い風だろう。

 クリエイター側にとってもライセンス料収入の増加や動画サイト「ユーチューブ」のスーパーチャット(ライブ配信などで視聴者が配信者を金銭的に応援できる「投げ銭」機能)などで収入を得る機会が広がったことも市場の拡大の一因だ。さらに現地に特化した地道なプロモーションも実を結んでいる。

 例えば、22年に公開された人気漫画「ワンピース」の映画版「フィルムレッド」ではTikTokでのキャラクター振り付け動画配信や監督が渡航してのファンイベントなどを行い、興行収入が伸びた。日本のIPコンテンツが広がっている背景には、長年にわたる関係者の地道な努力もあり、今まさに花開こうとしている。

次ページでは、IPで強みを持つ注目の日本企業9社を紹介する。

図表:日本のIP関連9銘柄