建設業界は半導体工場やデータセンターの建設ラッシュなどを受けて好調が続く。サブコンと呼ばれる設備工事会社の中には、電気や空調、通信など各種設備で強みを持つ企業への引き合いが強まっている。中長期的な投資の観点から業界の目利きが、サブコンで注目の日本企業8社を厳選した。(丸三証券アナリスト 河内 亮)
空調、トイレ、照明、Wi-Fi…
ニッチだが建物には欠かせない分野
建設業界は2021年に開催された東京五輪が終わってからも活況が続いている。
国土交通省が発表している建設工事受注動態統計調査(大手50社)によると、23年度の建設業受注高は18兆円(前年度比8.8%増)だった。五輪関連の工事などで盛り上がっていた18年度の15.9兆円を2年連続で上回っており、00年度以降の最高額を更新した。
また、サブコンと呼ばれる設備工事会社の受注高(各主要工事20社)も同様に上昇傾向にあり、23年度は4兆円(前年度比8.5%増)とこちらも活況を呈している。サブコンは電気設備や空調・水道衛生設備、通信設備などを専門に扱う。
建設業界は多重下請け構造であり、ゼネコンは不動産デベロッパーなどの発注者から工事を受注し、サブコンはゼネコンから専門工事を請け負う。サブコンが発注者から直接請け負うこともあるが、多くはゼネコンの下請けとしてサブコンは施工している。
建物を建てる際、当然ながらコンクリートや鉄骨だけで成り立つわけではなく、空調、トイレなどの水回り、照明や機械・パソコンのための電気系統、光回線やWi-Fiなどの通信環境といった設備が必要である。ニッチな業界だが、建設において欠かせない分野だ。
半導体工場向けのクリーンルームや
データセンター向けの冷却設備が伸びる
サブコン業界の牽引役の一つが、半導体関連をはじめとする工場の建設ラッシュだ。もともと近年は都市再開発による建設需要が高水準になっていた。ここに昨今の半導体工場やデータセンターなどの建設ラッシュが重なった形だ。
21年、半導体受託製造世界最大手の台湾TSMCが日本に工場を建設すると発表し大きな話題となった。竣工した第1工場と建設が予定されている第2工場には、政府が最大1.2兆円もの巨額の補助金を投入する見通しだ。
また、トヨタ自動車やNTTといった日本の大手企業が出資するラピダスは次世代半導体の量産を目指して北海道で工場建設を進めており、政府も支援を行っている。さらには、足元の円安な為替水準も背景として、製造業の国内回帰が進んでいる。
これらの産業施設関連ではサブコンの専門分野がより重要になっている。例えば半導体工場向けのクリーンルームの施工は大きく伸びている。クリーンルームとは空気中の塵や細菌、微粒子を取り除くことで清浄度を高めた部屋のことで、半導体や製薬、食品などの様々な工場で採用されている。
特に半導体のように精密な機器・部品を作る際に空気中の微粒子によって歩留まりが大きく左右されるため、特段の清浄度が要求される。他にも、データセンターではサーバーを冷やす空冷(水冷)技術や大量の電力消費に合わせた電気設備と制御、大容量・高速通信に耐える通信設備が要求される。
また、EV(電気自動車)市場拡大を見据えた蓄電池工場の建設も増加しつつある。蓄電池の製造工程では電極や電解液に水分が吸収されると性能が低下するため、超低湿度環境である「ドライルーム」が必要となる。マンションや商業ビルと比べて産業施設分野では比較的高い技術を要求されることが多く、専門分野で強みを持つサブコンや専門工事会社が活躍している。
次ページでは、サブコンで期待の日本企業8社について、それぞれ強みとなるポイントとともに、今期と来期の予想営業増益率を、銘柄表にまとめて紹介する。