日揮HD、日本製鋼所、岡野バルブ…原子力発電・核融合の新需要で大躍進期待の部材メーカー【厳選10銘柄】Photo:PIXTA

マイクロソフト、グーグルなど米巨大ITが相次ぎ、主要電源としての原子力発電に本腰を入れ始めた。AI(人工知能)の普及で爆増したデータセンターで使う電力を賄うためだ。米トランプ政権も新エネルギーを後押しする政策を打ち出し、小型原子炉の需要に弾みがつく中、原発を支える部材や技術の供給で強い日本メーカーに株式市場も注目し始めた。(QUICK Market Eyes コメントチーム 阿部哲太郎)

AIとデータセンターの増加による
電力不足解消の“切り札”

 世界規模で進むデータセンターの増加による電力不足が懸念される中、「ベースロード電源(低廉かつ安定供給を実現する電源)」としての原子力発電所の開発競争が加速している。

 原子力発電は、発電量の変動する太陽光や風力発電と異なり、天候に関わりなく24時間安定した電力を供給できるデータセンターの電源に最も適している。

 米国のIT大手は生成AI(人工知能)によるデータ量の増加に対応し、データセンターへの投資を強化する一方、原子力発電の電力確保に動いている。

 マイクロソフトは、世界有数のエネルギー企業である米コンステレーション・エナジーから、同社が向こう20年間に発電する電力の全量を調達する契約を締結した。コンステレーション・エナジーは稼働を停止していたスリーマイル島の原子力発電所を再稼働させる。

 グーグルは「SMR(Small Modular Reactors、小型モジュール炉)」と呼ばれる従来の原子炉よりも小型の核分裂炉を開発する米カイロス・パワーに投資し、電力の購入契約を結んだと発表している。

 米国政府も原子力発電を後押しする。24年7月、米バイデン政権が原子力における米国のリーダーシップ強化のためにSMR(小型モジュール炉)などの先進炉の導入法案を成立させた。

トランプ政権のエネルギー省長官は
原子炉開発メーカーの幹部

 25年1月に発足した米トランプ新政権は、エネルギー政策の転換に取り組むとみられている。新政権のエネルギー省長官に任命されたクリス・ライト氏はエネルギーのリバティー・エナジー最高経営責任者(CEO)とSMRの開発を進めるオクロの取締役を兼任している。

 小型軽水炉が大きな特徴のSMRは燃料や冷却材などの組み合わせは多様ながら出力が30万キロワット以下の軽水炉が該当するとされる。通常の100万キロワット程度の大型炉に比べて初期コストが少なくすむほか出力の調整もしやすく、核燃料の使用量が少ないため安全性が高い点がメリットとなる。

 現行炉の出力やメカニズムをベースとしつつ耐震性能や臨界制御、放射性物質の閉じ込め性能を大幅に高めた革新軽水炉は、30年頃の商用化が見込まれている。

 日本企業にとっても国内での原発再稼働が進めば、関連メーカーには商機となる可能性のほか、部材など海外向けの需要獲得が期待できそうだ。検討中の第7次エネルギー基本計画では40年のエネルギーミックスにつき、原子力の比率を2割程度にするとの方向で調整が進められていると報じられた。

 原発に加えて、実用化はまだまだ先の段階ではあるものの核融合への注目も高まる。

 核融合反応からエネルギーを得るため放射性物質の拡散などの重大リスクが少なく、エネルギー効率の高さや放射性廃棄物の少なさなどから核融合発電への関心も高まっている。海外では、米コモンウェルス・フュージョン・システムズが、25年までの稼働開始を目指して小型の核融合実験炉の建設を進めている。

次ページでは、原発の部材や技術、さらに次世代エネルギーとして期待される核融合技術で期待の日本企業10社について、それぞれ強みとなるポイントとともに、今期と来期の予想営業増益率を、銘柄表にまとめて紹介する。

日揮HD、日本製鋼所、岡野バルブ…原子力発電・核融合の新需要で大躍進期待の部材メーカー【厳選10銘柄】