Photo by Takayuki Miyai
スーパーゼネコン5社の中でも圧倒的な業績をたたき出しているのが、業界最大手の鹿島だ。2026年3月期の決算では、売上高が業界で初めて3兆円を超えるなど、王者の風格を見せつけた。建設費の高騰や相次ぐ再開発の中止で先行きに不透明感が漂う中、どのような成長戦略を描くのか。連載『騒乱!ゼネコン不動産』の本稿では、26年6月に社長に就任した桐生雅文氏に、建設費の高騰への対応や洋上風力発電の事業性、M&A戦略について語ってもらった。(聞き手/ダイヤモンド編集部 宮井貴之)
業界初の売上高3兆円を突破
海外事業でも1兆円超え
――2026年3月期連結決算では、売上高が3兆円を超え、営業利益や経常利益も過去最高を更新するなど好決算となりました。建設業界がさまざまな課題に直面する中で、好業績に至った理由をどう分析していますか。
売上高が3兆円を超えたということは、当社にとって一つの大きな節目です。そのうち、海外の売上高が1兆円を突破したことが非常に大きいと感じています。これは米国、欧州、東南アジアなど、世界各地においてエリアに根差した事業基盤の構築の成果が、ようやく数字に表れてきたのだと受け止めています。
一方、国内の建設事業については、われわれが指標としている施工面積自体はそれほど増えているわけではありません。物価上昇によって、全体の売上高が押し上げられたという側面もあります。
――営業利益も過去最高を記録しました。
国内の建設事業において、受注段階から着工、そして最後の竣工に至るまでの過程で、リスク管理を徹底できていたことが収益力の向上につながったと考えています。さまざまな施工条件をあらかじめ見極め、リスクを排除して契約を結ぶ。そして、いざ工事段階に入れば、確実な施工計画・工程管理に基づいて予定通りに進捗させていく。これにより、工事中の利益を確保することができました。
――売上高が1兆円を超えた海外事業についてですが、米国ではインフレに伴う経済成長の鈍化を受け、開発事業の収益が悪化しました。先行きが不透明な海外事業において、今後はどのように対応していきますか。
米国に関しては、金利の上昇によって開発事業の収益が上がりにくい状況にあります。市場環境をよく見極めながら、建設事業や開発事業を進めていく必要があると認識しています。
海外事業全般で言えば、国や地域によって特性が全く異なりますので、それぞれの実情を見極めることが重要です。例えば東南アジアで建設事業を行う場合、現地にはまだわれわれのような総合型のゼネコンが少ないため、日本の社員が現場に入り、現地の技能者を指揮して建物を直接造るというやり方が主流になります。
一方で欧米には、現地にしっかりとした建設会社が存在します。現地特有のリスクを回避するためには、そうした現地の有力な会社とパートナーシップを組み、協働していくことが不可欠だと考えています。
――米国はイランとの間で戦闘を終結することで合意していますが、原油価格の高止まりや原油由来製品のサプライチェーン(供給網)の解消には、まだ時間がかかる見通しです。イラン情勢の悪化に伴う資材の調達状況や、今後の業績への見通しをどう分析していますか。
資材が完全に枯渇しているというわけではなく、問屋が在庫を押さえて出し惜しみしているような状況だと分析しています。かつてのオイルショックのときと同じような一時的な動きに近く、状況は徐々に緩和されていくのではないかと予測しています。
今のところ、工程上の問題はありません。われわれは数カ月先の工程を見据えて、事前に資材を手配・輸入して確保しているため、足元での大きな影響は出ていません。
――建設業界では建設費の高騰が大きな課題となっています。26年6月には不動産協会との協議会の初会合が開かれるなど、建設業界だけではなく、社会全体の問題になりつつあります。桐生社長は、この建設費の高騰という課題にどう向き合っていきますか。
24年に時間外労働の上限規制が導入されて以降、建設現場で人手不足が深刻化する中、今後どうやって人手を確保して施工力を維持していくのか。また、三菱商事が撤退を表明するなど、事業性に課題が残る洋上風力発電事業には今後どう関わっていくのか。次ページでは、桐生社長が描く成長戦略や諸課題への対応について詳しく話を聞いた。







