ソニー 新・神話の真贋#5Photo by Reiji Murai

ソニーグループの半導体事業の設備投資が再び増加する見通しだ。足元では財務改善を理由に投資を絞り込んでいるが、米アップルのiPhoneカメラ向けイメージセンサーの性能を高め続けるためにも、次世代プロセスの設備投入は不可欠。それに備えてソニーが決断したのが、台湾TSMCと合弁会社を設立して投資負担を軽減することだ。経済産業省の支援も積極活用する。特集『ソニー 新・神話の真贋』の#5では、最大顧客であるアップルの思惑を読み解き、ソニーグループの財務を悩ませる半導体事業の巨額投資の行方を探る。(ダイヤモンド編集部 村井令二)

ソニーGの財務を圧迫する半導体
「設備投資を抑えて利益を生む」策とは?

 熊本県菊陽町に立地する台湾TSMCの熊本工場「JASM」。そこから数キロメートルの距離に、ソニーグループが熊本県合志市に建設した半導体イメージセンサーの新工場がある。敷地面積37万平方メートルの広大な土地の一角で今年3月、半導体製造装置を設置する建屋の建設が完了した。

 だが、その建屋の稼働時期は未定で、量産稼働する生産設備は搬入されていない「空っぽ」の状態にある。

 現在、優先的に製造装置を整備しなければならないのは、スマートフォン向けイメージセンサーの主力拠点である長崎県諫早市のイメージセンサー工場の第5棟の空きスペースだ。

 2023年に増設工事が完成したことで、延べ床面積15万5300平方メートルの巨大工場になったが、この第5棟への製造装置の導入も積極的には進めていない状態で、半導体設備投資は低水準で推移している。

 ソニーグループにとって、半導体の設備投資の拡大は財務を圧迫する悩ましい判断となる。足元では財務改善を理由に投資を絞り込んでいるが、スマートフォン向けイメージセンサーの巨大需要に応じ続けるためには、いずれかのタイミングで本格的に投資再開を決断する必要がある。

 それに向けてソニーグループは二つの手を打った。

 一つ目が台湾TSMCとの提携だ。ソニーグループとTSMCは5月、ソニー側が過半を出資する合弁会社を設立し、共同で投資を行うことなどを検討すると発表した。合弁会社を通じて合志工場と長崎工場の設備投資を検討し、ソニーグループは巨額投資の負担軽減を図る。

 二つ目が政府の支援の活用だ。経済産業省は4月、ソニーグループの合志工場で計画する総額1800億円の設備投資に最大600億円を補助すると発表した。ソニーグループは、TSMCとの合弁会社を通じた長崎工場への投資でも経産省の補助金を前提に検討する。つまり今後は、長崎工場・合志工場の両方の設備投資で、政府支援を求めていく。

 ソニーグループの十時裕樹社長が示してきた「イメージセンサーへの設備投資を抑えつつ利益を生む」との方針の通り、財務を圧迫せずに巨額の設備投資を継続する策としてTSMCと日本政府を巻き込んだ格好だ。

 準備を整えたソニーグループが再び設備投資に乗り出すのは遠い将来ではなさそうだ。次ページでは、同社の半導体事業の最大顧客である米アップルの思惑に迫り、半導体を巡る巨額投資の行方を探る。