ソニー 新・神話の真贋#6Photo:SOPA Images/gettyimages

スマートフォンの普及でカメラ市場が9割も縮む中、ソニーグループはミラーレスカメラ市場の立ち上がりをけん引し、カメラ事業をエレキ部門の大黒柱にまで育て上げた。特集『ソニー 新・神話の真贋』の#6では、ソニーがカメラメーカーの中で「独り勝ち」を実現した価格戦略を徹底分析。さらなる成長のカギを握る市場についても解説する。(ダイヤモンド編集部 井口慎太郎)

今やカメラが「エレキの大黒柱」
キヤノン、ニコンを逆転できた秘訣とは?

 ソニーグループは長い時間をかけて事業ポートフォリオを入れ替え、会社の形を変えてきた。かつて主役だったエレクトロニクスでは事業や製品の取捨選択を行って身を縮め、ゲーム、音楽、映画のエンターテインメント事業に経営資源を寄せた。エレキ部門である「ET&S」セグメントが全社の売上高に占める割合は2025年度に2割弱にまで小さくなった。

「ドル箱」だったテレビや携帯電話事業が縮小する中で、エレキ部門を支える優等生がカメラ事業だ。ソニーのレンズ交換式カメラや交換レンズを含む「イメージング」の売上高は20年度から2倍以上に成長し、25年度は7225億円だった。25年度のET&Sセグメントの売上高2兆2605億円の約3割を占めるまでになった。

 ソニーと対照的に、他のカメラメーカーは苦しんだ。象徴的なのがニコンだ。一眼レフが市場の大半を占めていた時代に存在感が大きかったが、一眼レフに代わってカメラ市場を席巻したミラーレスへの転換で出遅れ、20年度は562億円の営業赤字を計上した。

 ニコンは、遅れて参入したミラーレスで巻き返しを図っているものの、縮小する市場の中で生き残るのは簡単ではない。カメラ映像機器工業会(CIPA)によると、スマートフォンの普及によって、世界のデジタルカメラ市場は10年から9割以上も減った。1億台を超えていたデジタルカメラ総出荷台数は25年、943万台まで落ち込んでいるのだ。オリンパスやカシオ計算機など複数のメーカーがカメラ市場から撤退した。

 淘汰が進むカメラ業界で、ソニーは後発組にもかかわらず、キヤノンと並ぶ二大メーカーとして確たる地位を築いた。ミラーレスカメラのシェアはグローバルではキヤノンが約4割でソニーが約3割。国内ではそれぞれ約3割で拮抗しているとされる。

 ソニーはなぜ勝ち残れたのか。勝因は、数を追うのではなく、高く売れるカメラと交換レンズに注力したことにある。次ページでは、10年代のミラーレス市場の立ち上がりから現在まで、各社のエントリー機とミドル機の発売時価格を比べる。そこから見えるのは、縮む市場で値上げに成功した会社と、そうでない会社の戦略の格差である。ソニーの次なる成長の鍵はどこにあるのか。