起業経験はプラスにしかならない
このようにある事業機会の仮説を持って動き回っていれば、仮にその事業機会そのものが大きなものでないと判明したとしても、その仮説を検証する過程で新たな事業機会やより大きな事業機会の仮説が見えてきたりするものなのです。なので、スタートアップ的な動き方をしていれば、かならずチャンスは芋づる式に繋がってきます。
「この事業を失敗したらどうしよう……」
「やるからにはこの事業を成功させなければ人生終了だ……」
と言ったようなプレッシャーは感じる必要がないのです。
まかり間違って、芋づる式の事業機会でさえ行き詰ってしまったとしても、起業経験は箔こそ付けどマイナスになることはありません。むしろ自分の人材価値を増しているのです。他のベンチャーなり起業家マインドをもった人材を外部から登用したい大企業なりから引っ張りだこです。実際に私がベンチャー・キャピタリストとして、起業家を見る際も、たとえ失敗していても、何回か起業経験がある経営陣のほうを高く評価します(もちろんその他諸々もみますが)。
そして、より本質的には、スタートアップ的なマインドと行動原理をもって、自律的に事業機会を見つけ、それを捉えるべく行動に移し、常に新しいものを切り開いていくということは、ベンチャー、大企業、NPO……どのような場にいようと常に新たなチャンスを見つけ、行動に移せるようになって自らのキャリアと幸せを切り開けるようになっているはずです。
自分自身としっかり向き合い、自分の想いがどこにあるのかをはっきりさせ、それの実現にまい進する――そんな自己実現をベースにした生き方こそが、右肩上がりの経済成長が続かない時代で幸せになる秘訣ではないでしょうか。想いを信じ抜き、それを実現するための戦略を考え抜き、そして徹底的にやり抜く。それはまさに人生という事業を起こす、起業家的な生き方=スタートアップです。スタートアップこそが2000年世代の生き方流儀なのです。
2000年代はスタートアップ天国
今ほどスタートアップ的な生き方をするうえで、チャンスに溢れた時代はありません。インターネットをはじめとする技術の発展により、ネットを活用すれば少額の元手で事業が始められます。一般的なパソコンは一昔前のスーパーコンピューターの処理能力に匹敵し、プログラミングからデザインまで何でもできてしまいます。また、実際にサービスがユーザに支持されるようになってからも、トラフィックをさばくためのインフラに固定費的に投資する必要はありません。外部のクラウドサービスが重量従量課金で提供しています。また、何らかの生産を伴う事業であっても、中国の工場にOEM生産の委託をすることも簡単にできます。
創業期のファイナンス環境も以前に比べると格段に良くなっています。最近ではシードアクセレレーターと呼ばれる、チームと事業計画に賭け創業期のサービスを開始していない絵だけのベンチャーにファイナンスしてくれるプレーヤーも多く登場し、積極的に投資をしています。