Photo by Yasuo Katatae
全取締役が解任され、経営権が見ず知らずの会社に移転した――。脱毛サロン大手・ミュゼプラチナムの運営会社MPHの経営権をめぐるクーデターは、会社に届いた一枚のファックスから始まった。新刊『社喰い』(片田江康男・著、ダイヤモンド社刊)から、ミュゼプラチナム破産の裏で起きた衝撃の実話を抜粋してお届けする。(ダイヤモンド編集部副編集長 片田江康男)
ミュゼプラチナム運営会社で起きたクーデター
その日、東京・台場のMPH本社は、上を下への大騒ぎだった。
「こんなファックスが届いています」
2024年2月10日の朝、MPH社長の三原孔明氏は会社へ向かう途中、従業員からこんな報告を受け取っていた。
「ファックスには、2月7日でMPHの株主総会が開かれて、自分を含む全取締役が解任され、経営権が移ったと書いてあるというんです。そんな馬鹿なと。どうせいたずらだろうと思いました」
三原氏が台場のオフィスに着くと、入室用のカードキーが無効にされていた。近くの従業員にドアを開けてもらいファックスを確認すると、そこには確かに、自らが社長を解任されたことが記されている。
そして、見ず知らずの会社が、MPHの株式を取得し、新たな経営陣が発足したことなどが通知されていた。
異変はそれだけではなかった。
同社取締役の恵良司氏は、同日の出来事についてこう話す。
「会社の代表印が必要だったんで、本社の金庫へ取りに行ったら、『これは大事なものなんで、持ち出してはダメです』と言って、総務部の社員が、金庫に覆い被さっていたんです。その社員に、『一体、なんの権限があってそんなことしているんだ』って言ったんですが、結局金庫を開けることができなくて……。押し問答をしていたら、警察を呼ばれてしまいました」
金庫を抱え込んだ総務部の社員の行為は、まさしく“奇行”に見えたのだろう。恵良氏はこう付け加える。
「社員はみんな、びっくりしていましたよ。会社に来た警察も事情が分からないので、一旦その場を落ち着かせるだけで帰っていきました」
クーデター。まさにそう呼ぶにふさわしい状況だった。
恵良氏は、異常な状況が続いたことから不安に思い、翌11日、祝日にもかかわらず出社した。当時の状況について次のように話す。
「僕らも会社を防衛しないといけないので、金庫にある代表印は確保しないといけないと思ったんです。でも会社に行ってみると、金庫は持ち出されていました」
一体、誰が、何の目的でクーデターを起こしたのか。その全貌を追うと、会社の弱点を巧みに突いて経営陣を分裂させた経緯、また混乱の中でその会社を喰った者と喰われた者が入り乱れる、驚愕の実態が浮かび上がってきた。
(※本稿は片田江康男記者の新刊『社喰い』(ダイヤモンド社)を抜粋・編集した記事です)
記者。1979年東京都生まれ。2003年ダイヤモンド社に入社。2006年より『週刊ダイヤモンド』記者。これまで取材したテーマは東日本大震災後の東京電力問題や、大手生命保険会社における金銭詐取問題など。2021年からM&A業界を取材。M&Aのダークサイドに踏み込んだ『社喰い』(ダイヤモンド社刊)が好評発売中。
Key Visual by Kaoru Kurata, Manami Kanemura







