Photo by Yasuo Katatae
設立から約2年で、20社近い中小企業を次々と買収したマイスホールディングス。その一方で、買収後に会社の資金を抜き取られたとして、元オーナーがマイス社を提訴するなど深刻なトラブルが相次いでいた。なぜ、このようなM&Aが繰り返されたのか。新刊『社喰い』(片田江康男・著、ダイヤモンド社刊)から、“ストロングバイヤー”とも称される企業の実態を追ったルポを抜粋してお届けする。(ダイヤモンド編集部副編集長 片田江康男)
会社を買いまくる
ストロングバイヤー
「かなりまずいと思います。うちはやっていないのでいいんですが……」
旧知のM&A仲介会社の幹部は2025年5月、自らが身を置く業界へのさらなるバッシングを予期したのか、渋い表情でこう話し始めた。
まずいもの――。
それは大阪に本社を構えるマイスホールディングス(マイス社)が行ってきたM&Aを指していた。
マイス社について調べてみると、2023年3月に設立されてから、確認できるだけで20社近い中小企業を買いまくっていた。しかも、買収した会社の業種や地域もちぐはぐ。
前出のM&A仲介業者は、マイス社が買収した企業から資金を吸い上げ、そのうちの何件かで、トラブルが顕在化していると話すのだ。
この件について大手信用調査会社の幹部に話を向けると、こう返事をよこしてくれた。
「ついにマイス社の取材をやるんですか……。われわれも実態はよく分かっていないのですが、ホームページを見ると、物騒なニュースリリースを出しているので、何が起こっているんだろうかと思って注目しています」
一体、マイス社はどのような企業なのか。何を目的に会社を買い漁っているのか。取材を始めることにした。
「明日が来ないでくれ」
訴訟を起こした元オーナー
「ちょうど来月、マイス社を訴えた裁判の第1回期日なんです」
2025年6月、私の取材に応じた誠美工業所(仮名)の元オーナー三浦英成氏(仮名)はこう切り出した。
誠美工業所はマイス社に買収された後、会社の資金を抜き取られ窮地に陥った。この騒動に巻き込まれたことを理由に、取引先との関係が壊れ、大きな影響を受けている。
「当時は辛くて、明日が来ないでくれ、という気持ちでした。全く眠れませんでした」
三浦氏は本社で訥々と話し始めた。Tシャツの袖からのぞく腕は筋肉で覆われ、力仕事をこなしてきた、現場のリーダーといった風貌だ。日焼けしているからか、私と同世代にもかかわらず、随分と若々しく見えた。
「父が仕事を始めてから30年、私が18歳の時に引き継ぎ28年、一度も滞ることがなかった銀行や取引業者への支払いが遅延し、父の代から付いてきた社員たちの給与も払えず、毀損された信用は計り知れません。父と、亡くなった祖母、全ての人たちに顔向けできません」
三浦氏の目には、静かな怒りが宿っていた。







