社喰い#12Photo:PIXTA

会社員なのに“億円プレーヤー”も夢ではない――。M&A仲介業界は今、日本でも屈指の高年収業界として知られるようになった。その一方で、事業承継を目的としたM&Aではトラブルが絶えない。発売後即重版となった新刊『社喰い』(著・片田江康男、ダイヤモンド社刊)から、トラブルが絶えないM&A業界のカラクリを抜粋してお届けする。(ダイヤモンド編集部副編集長 片田江康男)

平均年収2000万円超えも
バブルに沸くM&A仲介業界

 後継者不足に悩む経営者は後を絶たない。そんな中、事業承継を目的としたM&Aについて、国は税制優遇や補助金制度を導入するなどして後押ししている。

 だがその裏では、買収後の資金流出や約束の不履行、経営権を巡る混乱など、深刻なトラブルが相次いでいる。

 M&Aトラブルに直面した当事者らは、口々にM&A仲介会社の“手数料欲しさ”が、問題の根底にあると指摘している。実際、M&A仲介会社の内情はどうなっているのか。

 M&A仲介会社の中でも、急成長を続けるM&A総合研究所のM&Aアドバイザーは、次のように話す。

「年収を稼ぐ思いが強い人間しか、この業界には来ないですよ」

 また同社OBも、次のように業界内の空気感を教えてくれた。

「M&A総合研究所だけではなく、大手M&A仲介会社は人材エージェントを使って大量に人を集めています。入ってくるのは稼ぎたい人。高い報酬が得られるというのが、業界に人が集まる理由です」

 M&A仲介会社はここ数年、高年収企業の代名詞として知られるようになった。

 有価証券報告書に掲載されている平均年収を調べると、M&A仲介業界2位のM&Aキャピタルパートナーズ(MACP)は2265万円(2025年9月期)、平均年齢は32.4歳だ。これは、2025年に決算期を迎えた全上場企業の中で1位である。

 高給取りと言えば、5大総合商社がすぐに頭に浮かぶだろう。だが、その中で平均年収トップの三菱商事であっても、2025年3月期は2033万。MACPとは200万円以上の差がある。しかも三菱商事の平均年齢は42.4歳だ。

 高給取りなのはMACPだけではない。M&A仲介業界3位のストライクも1521万円で、全上場企業の年収ランキングでトップ20の常連。

 業界トップの日本M&Aセンターは、2021年10月に持株会社体制に移行したため、2022年3月期以降は同社社員の年収は開示されなくなった。だが最後に開示された2021年3月期の平均年収は1243万円で、こちらも全上場企業の中でトップクラスだ。