Photo by Yasuo Katatae
最盛期の会員数は430万人を超えたと言われ、業界最大手へと成長した美容脱毛サロン「ミュゼプラチナム」。だが、急成長の裏では、前受金に依存した自転車操業が進んでいた。経営権は次々と売買され、「ミュゼ転がし」と呼ばれる異常事態にまで陥る。新刊『社喰い』(片田江康男・著、ダイヤモンド社刊)から、衝撃的な破産を迎えたミュゼの知られざる舞台裏を抜粋してお届けする。(ダイヤモンド編集部副編集長 片田江康男)
創業者はマーケティングの天才
美容脱毛サロン大手・ミュゼプラチナムは2002年8月に立ち上げられた。
当時の運営会社であるジン・コーポレーションが、「美容脱毛専門サロン・ミュゼプラチナム」1号店を福島県郡山市にオープンさせてから、破竹の勢いで日本全国に広がった。
ある脱毛サロン経営者は次のように話す。
「創業者はすごい人ですよ。ミュゼのサービスが他のサロンよりも高いレベルかというと、そうではないと思います。でも売るための戦略を立てて、認知度を上げ、ブランドを作ることに関しては、才能がありました」
ミュゼが得意としたのは、インフルエンサーによるSNSマーケティングや女性タレントを起用した広告戦略。低価格キャンペーン、通い放題プランなど、若年層を中心に顧客を獲得し、支持を集めていった。前出のサロン経営者が解説する。
「ミュゼは当時、低価格でワキの脱毛のキャンペーンをやっていました。お客さんは安いから、ワキの脱毛をやってみようという気になる。でもワキをきれいにしたお客さんは、他の部分の毛が目立って、気になっちゃうものなんです。それでまた別の部位の脱毛をするために、店に行くことになる。その繰り返しで、最終的には全身脱毛することになって、一人の客から高額な料金を得られるんです。ワキの脱毛を、“脱毛エントリー”として上手に使っていました」
この戦略は大当たり。東京商工リサーチによると、ミュゼの売上高は2014年8月期に386億円に達していたとされる。
ミュゼを担当していた信用調査会社の調査員は、次のように話す。
「2010年前後のミュゼは、前受金を日本全国への出店の費用などに流用していたようです。それで実際、爆発的に店舗数が増えて、ナンバーワンの脱毛サロンとしての地位が確立されたんです」
前受金を先食い……、
自転車操業へ
一方で、急成長するミュゼに対して、金融機関や信用調査会社からは危うさが指摘されていた。
そのころのミュゼは、複数回の施術を受けられる権利を、30万円程度でまとめて販売する手法をとっていた。このためミュゼには莫大な前受金が舞い込んでいる状況だったとみられる。
顧客から一括で支払われたカネは、「前受金」として会計処理するのが通常だ。そして顧客が実際に施術を受けた段階で、初めて売り上げとして計上される。
だが、脱毛サロンでは、顧客が実際に施術を受け、権利を全て消化するまでに年単位の時間がかかることも多い。中には、権利を全て消化せずに通わなくなる顧客もいる。
前受金を適切に管理できればいいが、往々にしてミュゼは、前受金を別の用途に使っていたようだ。前受金を先食いしながら爆発的に店舗数を増やしていたミュゼだが、その弊害はすぐに露呈する。
増えすぎた顧客を抱えきれず、予約の取りにくさが不評を買い始めたのである。このため、2014年前後を境に解約が急増。解約金の支払い要請が一気に押し寄せ、2015年8月期には約52億円の最終赤字に転落してしまう。
それでも、SNSマーケティングと広告戦略は止められない。解約金の原資を得なければならないからだ。
こうして、新規の顧客からかき集めたカネを解約金の支払いに回すという、猛烈な自転車操業に陥っていた。ミュゼのビジネスモデルは瞬く間に崩壊し、経営状況はみるみる悪化していく。







