Photo by Shuhei Inomata
産業経済新聞社のウェブサイト運営や広告営業などを手掛ける産経デジタルの決算報告書をダイヤモンド編集部が独自に入手した。新聞各社がデジタル分野での収益拡大を模索する中、報告書から見えてきたのは広告収入の伸び悩みで苦戦する厳しい現実だった。一方で、広告に依存しない新たな事業へのシフトなど、激変するメディアビジネスを生き抜くための「変化の兆し」も浮かび上がった。連載『メディア興亡』の本稿で明らかにする。(ダイヤモンド編集部 猪股修平)
サブスク、SNS、独自アプリ…
「新聞×デジタル」を阻むマネタイズの壁
新聞発行部数の減少や原材料コストの高騰によって、新聞社は紙の発行での収益拡大が見込めなくなって久しい。各社は新たな稼ぎ頭としてデジタル事業でのマネタイズ化にかじを切っている。
日本経済新聞社が2010年3月に「日経電子版」を創刊して以降、それを追うように他の新聞社も有料課金制のデジタルメディアを立ち上げた。しかし、紙の部数減を補うほどの読者をデジタル媒体で獲得できていないのが実情だ。「デジタルで唯一勝ち組とも評される日経でさえ、日経朝刊の減少に追い付くほどの伸びを電子版で出せていない」(全国紙の中堅社員)。
それ故「新聞×デジタル」のビジネスは五里霧中の様相を見せる社も少なくない。新聞のデジタル化以外では、SNSの運用で活路を見いだそうとする会社もあるが、フォロワー数やYouTubeの公式チャンネルの動画再生数が一朝一夕で飛躍的に伸び、持続的な収益に結び付くわけではない。
例えば千葉日報社はLINE公式アカウント「ちばとぴ&千葉日報」の友だち数が7月14日時点で75万人を超える実績を持ち、地方紙としては圧倒的なユーザー接点を構築している。だが、中元広之社長は「高度な収益化につなげるのは難しい。千葉日報としてのデジタルシフトにはならない」と明かす(詳細は本連載#18『公式LINE友だち数74万人超でも「本当に厳しい」千葉日報社社長が明かす新聞経営のリアル』参照)。
毎日新聞社はグループの中期経営計画で「サブスク収入の成長」をぶち上げ、YouTube番組の制作による収益化やポッドキャストを年間1000万~1500万円まで収益拡大する方針を打ち出しているが、社内外から「実現までの道のりが想像できない」と冷ややかな視線が集まる(詳細は本連載#10『【内部資料入手】毎日新聞GHDが「売上高半減」の背水の中計、28年度1000億円維持へ“サブスク頼み”の空中戦…社員「数年後に会社があるのか」』参照)。
また、ある地方新聞社の社員は社名を明かさないことを条件に迷走する自社のデジタル戦略をこう打ち明ける。
「ある年に突然、デジタル系の部局がよく分からないコンサル会社との協力で『新しいアプリを開発する』と発表した。何回か社員説明会はあったけれど、出来上がった代物は従来のデジタル版より使い勝手が悪く、ローンチしても反響はほとんどなかった。『中途半端なコンテンツが増えただけでコンサル料の払い損ではないか』と批判的な見方もある」
このように、堅実なデジタル戦略の確立に多くのメディアが悩む中、ダイヤモンド編集部は産業経済新聞社の系列会社、産経デジタルの決算報告書を独自に入手した。
そこから見えてきたのは、苦境にあえぐ新聞社のデジタル事業の「リアルな現在地」だった。次ページでは直近の決算の詳細や関係者の証言を報告する。







