メディア興亡#26Photo by Yoshihisa Wada

映画「8番出口」や「爆弾」などのヒット作を生んだ映像制作大手KANAMEL(カナメル)を、日本テレビホールディングスが完全子会社化した。総額483億円という日テレ史上最大の巨費を投じた大型M&Aは、国内地上波に依存した「一本足打法」から脱却しコンテンツで世界市場に打って出る同社の「開国」戦略の核心にほかならない。米Netflixなど海外の映像プラットフォーマーとどう闘い、激変する業界でどう勝ち抜くか。連載『メディア興亡』の本稿で、日テレのグループ戦略を担う澤桂一上席執行役員と、KANAMELの中江康人社長に聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部副編集長 重石岳史)

「脱・地上波」へ巨額投資
世界で闘う「垂直統合」の全貌

 スマートフォンの定着やグローバル動画配信サービスの爆発的な普及に伴い、テレビの総個人視聴率(PUT)は緩やかな減少傾向をたどっている。

 直近の決算を見ても、日本テレビホールディングス(HD)はコアターゲット層の高視聴率や子会社スタジオジブリの好調により売上高や利益共に過去最高を更新しているものの、地上波単体のタイム広告収入は微減となっており、従来の番組枠販売だけに頼る収益構造の限界は明白だ。

 こうした環境下、日テレHDは中期経営計画で「日テレ、開国!」を掲げ、2033年度までに売上高7000億円、海外売上高1000億円を達成する長期目標を設定した。そのために今年3月に決定したのが、売上高783億円規模を誇る映像制作大手KANAMEL(カナメル)の完全子会社化である。

 AOI Pro.やTYOといった国内トップクラスの制作会社や高度なVFX(視覚効果)技術、海外7カ国の拠点を手に入れたことで、日テレHDは企画から制作、海外展開までを垂直統合し、世界市場へ直接ハイエンドコンテンツを投下する体制を整えた。

 放送枠中心の発想から脱却し、コンテンツ自体の価値で稼ぐ「総合エンターテインメント企業」への転換を模索する動きは、日テレHDに限ったものではない。

 例えば、フジ・メディア・ホールディングス(FMH)の清水賢治社長もダイヤモンド編集部のインタビューで、不動産事業のオフバランス化を進めながら放送起点からコンテンツ投資起点へのシフトを表明している(『フジテレビ清水社長が記者に逆質問「今、テレビって絶対的ですか?」不動産依存を脱却し、放送局からコンテンツ企業へ舵を切る決意を激白』参照)。

 メディア各社が生き残りを懸けて「脱・テレビ局」の経営へかじを切る中で巨額投資を断行した日テレHDとKANAMELの統合は、日本のエンタメ・広告ビジネスをどう変えていくのか。その具体的な戦略と現場のリアルな姿を、次ページに続く両社幹部へのインタビューで明らかにする。