取材に応じた事実上のオーナー
複数の個人から訴訟も

 KOC・JAPANは、赤字を垂れ流すミュゼをなぜ買収したのだろうか。疑問が尽きることはない。直接の取材を諦めかけたころ、KOC・JAPANの事実上のオーナーが取材に応じた。

 船井電機HDからミュゼを買収した経緯について、その人物はこう話す。

「知り合いから持ち込まれました。(ミュゼを)買収することになって、船井電機側からは月5億円程度あれば、再建できると言われましたが、実際にはそんなことは全然なくて。仕方なく、2024年4月にはわれわれ(注:KOC・JAPAN)ではなくて、別の人に経営を任せることにしました。船井電機もわれわれも、ミュゼに引きずり込まれちゃったんですよ。(ミュゼの話を持ってきた)知り合いが誰かは……、ごめんなさい、言えません」

 さらに日本での事業について、オーナーは次のように話す。

「今でも会社はありますよ。でも、もう事業はやっていません。代表者は債権者への対応をしています。Cポンも動いていません。こうなってしまった要因は、簡単に言うと2つあって、ミュゼに引きずり込まれたこと、それと、香港の会社を買収しようとした時に、騙されちゃったんですよ。買おうとした会社を、乗っ取られたんです」

 さらにKOC・JAPANについて調べていると、同社はトラブル続きだったことが分かってきた。

 ミュゼを買収して約4カ月後の2025年7月10日、東京労働局の公表文書にKOC・JAPANの社名があった。雇用調整助成金の不正受給である。

 雇用調整助成金は、景気悪化などで従業員の雇用の調整が必要になった時に、企業が従業員に支払う休業手当などを国が助成するものだ。コロナ禍で、多くの企業が活用したことで知られる。

 公表文書によればKOC・JAPANは、「休業していないにもかかわらず、休業したとする虚偽の申請書類を作成し、当該助成金を不正に受給した」のだという。不正受給金額は2202万7866円だった。

 加えてKOC・JAPANは、複数の個人から4500万円もの資金を借り、その返済が行われていないとして、訴訟を提起されていたことも判明している。

 繰り返すが、ミュゼは長年にわたり赤字が続く企業だ。KOC・JAPANはなぜ買収に乗り出したのか。一時、ミュゼの経営に関わった人物は、見立てを披露してくれた。

「やっぱりミュゼはブランド力がありますから。それに会員数も他の脱毛サロンとは桁違い。KOC・JAPANがミュゼを買収したのも、Cポンをミュゼの会員に使わせて、事業を軌道に乗せたかったんでしょうね」

 そしてミュゼは、さらに新たな会社の手に渡ることとなる。

(※本稿は片田江康男記者の新刊『社喰い』(ダイヤモンド社)を抜粋・編集した記事です)

片田江康男(かたたえ・やすお)
記者。1979年東京都生まれ。2003年ダイヤモンド社に入社。2006年より『週刊ダイヤモンド』記者。これまで取材したテーマは東日本大震災後の東京電力問題や、大手生命保険会社における金銭詐取問題など。2021年からM&A業界を取材。M&Aのダークサイドに踏み込んだ『社喰い』(ダイヤモンド社刊)が好評発売中。

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