業績、株価、賃金、就職… 5年後の業界地図 AI格差で序列激変!?#6Photo:BlackJack3D/gettyimages

株価が軒並み下落したアンソロピック・ショックで、一時ITセクターには“AI脅威論”が台頭した。各社の業績は実際には底堅いとはいえ、中長期を見据えると生成AI時代で勝ち残る企業、淘汰される企業の選別が明確に進んでいく。特集『業績、株価、賃金、就職… 5年後の業界地図』の#6では、ITセクターの生き残りの条件を解説。具体的な“本命銘柄”について触れていこう。(ダイヤモンド編集部 山本 輝)

アンソロピック・ショックは過剰反応
ITセクターは高成長を維持

 今年2月にITセクターを襲ったのが「アンソロピック・ショック」だ。米アンソロピックが最新の生成AIサービスを発表したことなどをきっかけに、AIがSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)を時代遅れにするという「SaaSの死」への懸念が勃発。米国のソフトウエア企業の株価が軒並み下落した余波を受けて、国内のITセクターもまた大きく市場での評価を下げたのだ。

 ただし、アンソロピック・ショックから半年ほどがたち、こうした過度な悲観論はすでに過去のものになりつつある。大和証券の上野真チーフアナリストが「ITセクター全体に対するAIによるディスラプションシナリオは、機関投資家の間ではすでに修正されており、懸念の声はほぼなくなった」と指摘するように、株価の調整は行き過ぎだったというのが多くの専門家に共通する見解だ。

 そもそも、足元のIT各社の業績は非常に底堅いものがある。これまでデジタルトランスフォーメーションなどによるニーズの拡大で、主要IT企業のほとんどが増益基調にあり、代表企業の富士通は、2024年3月期に2836億円だった調整後営業利益が、26年3月期には3905億円へと飛躍的に増大している。

 日本銀行の調査によると、企業のソフトウエア投資額は25年度の5.7兆円から26年度は6.5兆円と大きく拡大する計画で、マクロ的に見ても引き続き旺盛なITニーズが見込まれる。こうした環境から、各社の業績も引き続き成長が期待されている。

 一方で、生成AIの浸透により、ITセクターが“激変”を迫られるのも事実だ。「これまではセクター全体が伸びていたものの、5年後、10年後を見据えたときに、“勝てる企業”が明確に分かれてくる可能性があり、マーケットの中で選別が始まっている」。ゴールドマン・サックス証券の田中誓アナリストはそう指摘する。

 AI技術の進展は、AIコーディングによる生産性の改善やAIエージェントといった新しいビジネス領域の拡大といった恩恵をIT企業にもたらす可能性も高いほか、ITの中には生成AIに単純に代替されにくい領域も多い。逆に言えば、そうした生成AI時代に“耐性”を持たない企業は、今後淘汰される可能性が極めて高くなっているのだ。

 それでは、AI時代に勝てる本命銘柄はどこなのか。

 次ページではアナリストの見解を基に、IT業界の“勝ち組”に必要な条件と、具体的な銘柄について分析していこう。富士通、NECなど業界大手は今後も主役で居続けられるのか、注目すべき“特化型”の企業はあるのか……その展望をひもとく。

図表:5年後のIT業界サンプル