輸出部門の同期の中には、留学生に選ばれるのを目標にしている連中がたくさんいた。自分に人事考課上の箔をつけ、会社の中の出世レースを有利に運ぶため、あるいはMBA(経営学修士)の肩書を持って外資系の会社に転職を図る連中もいた。私には、
「あの連中と一緒になりたくはない」
という気持ちがある一方で、広い世界で自分を試してみたい、という気持ちもあった。
当時、私は結婚して子供もいたので、打診してくれた課長への返事は、
「留学は単身が原則と聞いていますが、妻子を連れていってもいいでしょうか?」
と、そんな感じだったと思う。
社内選抜に受かり、米国留学が決まった。
今にして思えば、この時がキャリアの大きな転機だった。しかし当時はそんな意識は全くなく、広い世界を見るのもいいなといった軽い気持ちにすぎなかったのだが、いずれにせよ、妻の「そんなに暇なら」の一言が大きかったのは確かだった。
私の場合、このような経緯で比較的若いうちから英語で仕事をすることへの抵抗感はなくなっていたが、後のゴーン改革の中ではそれまで「英語は苦手」と敬遠していた中堅や年配の社員も必要に迫られて英語で仕事をせざるを得ない状況に追い込まれた。全く話せなかったのに多国籍チームのリーダーに成長した例も少なくなかった。
どうすれば英語が話せるようになるのかと問われることもある。私の経験からいえば、仕事のうえで必要な質問や説明をすべて英語でこなせれば後はなんとかなるものだ。日本語で物事を順序だてて説明できる力が基本で、あとは中学生の間に学んだ基礎的な英語さえしっかり身についていればいい。
必ずしも流暢に話せる必要はない。その基本を繰り返しながら英語で話すことそのものに慣れていけば、自然とリスニング力も伴ってくる。
そもそも国際的なビジネスの場ではESL(イングリッシュ・アズ・ア・セカンド・ラングウェッジ、第二言語としての英語)が公用語であり、米国人や英国人のように話す必要は全くない。英語を母国語とする人でもオーストラリアやインドなど、国によって発音やイントネーションも様々だ。ましてやESLとなると、フランス訛りの英語、ドイツ訛りの英語など千差万別で、日本訛りの英語であっても堂々と話せばいいのである。社会人になってから習得した私の英語でも十分に相手との信頼関係を築くことができたと思っている。







